東京女子医科大学血液浄化療法科の菊池勘氏

 横浜で開催された日本透析医学会(JSDT2011)で、「透析患者のC型ウイルス肝炎診療ガイドライン」が発表された。スクリーニングからインターフェロン療法、感染予防まで含む包括的なガイドラインで、定期的なトランスアミナーゼやHCV抗体検査の実施法、トランスアミナーゼ値の読み方の注意点、インターフェロン療法の適応の考え方、感染予防策などを詳説した、透析医療の現場に直結するガイドラインとなっている。同ガイドライン作成メンバーの1人である東京女子医科大学血液浄化療法科の菊池勘氏(写真)が、シンポジウム「透析医療と感染症」の中で概要を解説した。

 スクリーニングの項ではまず、透析患者における血清トランスアミナーゼ値の特性に言及。透析患者は腎機能正常者に比べて血清トランスアミナーゼが低値であること、そのため透析患者でもHCV抗体陽性者は陰性者よりも測定値が高くなるが、一般人の基準値が使用できないことに注意を促した。

 同検査の測定頻度としては、「無症状であっても月に1回以上は測定することが望ましい」とした。同値が基準値内であっても、定期的な検査で上昇傾向が認められた場合は、HCVの感染を早期に疑うことができるためだ。

 また、「透析導入期および転入時はHCV抗体検査、必要に応じてHCV-RNA検査を行うこと」を推奨した。腎疾患患者ではHCV感染率が高いうえ、透析施設によって抗体陽性率が大きくばらついている現状を反映させた。

 HCV抗体検査の頻度については、初回検査で陰性であっても6カ月に1回は測定することが望ましいとした。そして「明らかな原因もなく血清トランスアミナーゼが上昇した場合は、臨時にHCV抗体検査に加えてHCV-RNA検査あるいはHCVコア抗体検査を行うこと」を推奨している。

 現在、透析中のC型慢性肝炎患者に対するインターフェロン療法の実施率は、2%にとどまるという。ガイドラインがなかったことから、腎臓専門医・透析専門医とも強く治療を勧めることができなかったことも一因だ。だが、HCV抗体陽性透析患者は肝硬変・肝癌発症率が高く、予後も悪いことが指摘されている。そこで本ガイドラインでは抗ウイルス療法についても、インターフェロン療法の進歩を踏まえてより積極的な姿勢を打ち出した。

 具体的には、「生命予後が期待できるHCV感染透析患者に対しては、積極的に抗ウイルス療法を行うこと」を推奨した。生命予後が期待される患者とは、国際的な腎臓病ガイドラインにあわせ、重篤な心血管合併症がなく、年齢が若く、最低5年の生存が見込める患者と定義された。

 ただし、現在の抗ウイルス療法の標準治療はインターフェロンとリバビリンの併用療法だが、リバビリンが透析患者には禁忌であることから、インターフェロン単独療法を第一選択とすること、投与量を減らして十分に観察しながら投与することとした。

 「このガイドラインの普及によって、HCV感染透析患者の適切な管理と治療が普及することを期待する」と、菊池氏は発言を締めくくった。

(日経メディカル別冊編集)