明芳会イムス記念病院(東京都)の浅井直子氏

 災害発生時に備え、患者に透析条件表を携帯してもらう試みが広がっている。しかし、条件表の更新作業が煩雑で継続が難しいのが現実だ。この課題を克服するため、「お薬手帳」と「透析条件表」を合体させる方法を試みたところ、一定の成果が得られることが分かった。横浜で開催された日本透析医学会(JSDT2011)で、明芳会イムス記念病院(東京都)の浅井直子氏(写真)らが報告した。

 浅井氏らはまず、これまでパソコンのFilemaker Proを利用した透析管理システムで作成していた透析条件表を検証した。更新作業の効率化、携帯のしやすさという視点で見直した結果、これまでのカード型はサイズが小さい、ラミネート加工する手間がある、パソコンで印刷する手間がある、ほかのスタッフが作業中の場合にすぐに作業ができない、パソコン操作が苦手な人がいるため特定の人に更新作業が集中する、などの問題点が明らかになった。

 また、透析管理システムと内服薬の情報を管理する院内オーダリングシステムの間で情報を共有できないことから、透析条件表に処方内容を反映するには、改めてパソコンで入力しなければならないという二度手間の問題もあった。結局、パソコンの使用で効率化が期待された透析表作成作業は、かえってスタッフの負担になっていたことが判明した。加えて、特定の人に更新作業が集中するため、スタッフ全員の更新に対する意識が低下するというマイナス面も浮かび上がった。

 これらの課題を解決するため、処方歴などをまとめた「お薬手帳」に透析条件表をクリップで固定する方法を考案。具体的には、(1)条件表の大きさを、カードサイズから、お薬手帳の1頁の大きさに相当するA6に変更する、(2)更新作業は、その都度パソコンに入力し直して印刷していたものを、修正テープで過去の条件を消し、新しい条件をペンで上書きする方法に変更する、(3)内服情報は、お薬手帳に処方シールを張ることで対応する、(4)パソコン操作に慣れたスタッフだけが行っていた更新作業はスタッフ全員で行う、(5)透析条件表の確認は毎月1回、スタッフが確認する、(6)パソコンの透析管理システムへの集約と条件表の印刷は半年に1回とする、などの改善を行った。

 同病院では、2010年12月から、外来透析患者全員に透析条件表を添付したお薬手帳を配布。現在も運用を続けている。

 運用開始から半年だが、透析表の更新作業を手書きとしたことで変更が容易になり、また内服薬の情報はお薬手帳に処方シールを張ることで済むため効率よく行えるようになった、などの成果が現れている。一方、患者へのアンケート結果によると、常に携帯する人が4割にのぼるなど、「透析条件表を携帯する患者が増え、災害への意識向上にもつながっている」(浅井氏)。引き続き、災害に備えるため、常時携帯率を向上させる検討を重ねていく意向だ。

(日経メディカル別冊編集)