埼玉医科大学腎臓内科の佐藤貴彦氏

 慢性腎臓病CKD)ステージ3以上(糸球体濾過量で59mL/min/1.73m2以下)の腎機能低下が、細菌感染症の罹患リスクになっていることが分かった。埼玉医科大学腎臓内科の佐藤貴彦氏(写真)らが、同科受診患者836人の経過を3年以上にわたって調べた結果、明らかになった。また、糖尿病免疫抑制薬使用も同じくリスクを増大させる因子に、逆にスタチン使用はリスクを低減させる因子になっていた。成果は、横浜で開催されていた日本透析医学会(JSDT2011)で発表された。

 日本透析医学会統計調査委員会の報告(2009年)によると、透析患者の死因第1位は心不全だが、以前に比べると明らかに減少している。感染症は現在2位だが、ここ10年ほどはほぼ右肩上がりで増加しており、近い将来、心不全を抜くことも考えられる。

 一方、CKD患者における感染症罹患の実態は、十分検討されていない。一般に腎機能障害が進むと、細胞性免疫能の低下、低栄養、貧血などにより、易感染性になると言われている。だが、腎機能低下が感染症罹患のリスク因子になるかどうかを検討した報告は、ほとんどない。

 既に2009年に佐藤氏らは、CKDの重症度と帯状疱疹罹患との関係を報告している。腎臓内科外来または透析外来に通院中の70歳代の全患者175人(免疫抑制状態と考えられる症例は除外)を対象に、帯状疱疹罹患率をCKDステージ別に検討した。CKDステージ1〜3、4〜5、5Dと、CKDが進行するに従い、帯状疱疹のリスクの有意な上昇が明らかになったという。

 今回は、CKDステージの進行に伴い、細菌感染症の罹患リスクが上昇するかどうかを検討した。対象は、2005年の1年間に腎臓内科外来を受診した1820人中、3年以上の経過観察が可能だった836人(平均年齢52.7歳)。過去を起点とするコホートで、細菌感染症の罹患(入院加療を要するもの)を調べた。

 その結果、何らかの細菌感染症が61例(7%)、計87件認められた。呼吸器感染症が最も多く48%で、以下、尿路感染症21%、腸管感染症10%、皮膚感染症9%などという順だった。

 感染症罹患群と非罹患群で患者背景を比較したところ、年齢、男女比、推算糸球体濾過量(eGFR)、CKDステージの分布、血清アルブミン値、血清総コレステロール値は、両群で有意差が見られなかった。

 これに対して、糖尿病を有する割合、悪性腫瘍を有する割合は罹患群で有意に高く、スタチン使用(6カ月以上)の割合は非罹患群で有意に高かった。一方、免疫抑制薬使用(6カ月以上)の割合、CKDの進行速度(年当たりのeGFRの変化量)には、有意差がなかった。

 さらに、感染症罹患の関連因子について多重解析を行うと、糖尿病(RR:2.272、p=0.009)、免疫抑制薬使用(RR:2.529、p=0.014)、スタチン使用(RR:0.475、p=0.032)とともに、CKDステージ3以上(RR:2.533、p=0.008)も有意な関連因子になることが分かった。

 この結果から佐藤氏は、「CKDステージ3から細菌感染症のリスクが増大する」と結論した。リスク増大の理由については今後検討したいとしたが、感染症リスクが高いとされる糖尿病の割合がCKDステージが進むごとに増えるという傾向は見られなかったという。なお、スタチンの効果は、いわゆるpleiotropic effectによるものと推測されるとした。

(日経メディカル別冊編集)