品川ガーデンクリニックの若井陽希氏

 在宅医療がさまざまな診療領域に浸透しつつある。在宅療養支援診療所(支援診)としても機能する透析クリニックを昨年4月、東京都品川区に開業した品川ガーデンクリニック若井陽希氏(写真)は、支援診機能を持つことで「透析患者によりよい医療を提供できる可能性がある」と語った。定期通院透析患者の2割から往診の依頼があり、また往診が入院回避につながったと考えられる患者を開業後の約1年間で3例経験した。横浜で開催されていた日本透析医学会(JSDT2011)で報告した。

 透析患者も高齢化が進んでいる。日本透析医学会統計調査委員会の報告によると、2009年に透析導入された約3万7000例の平均年齢は、男性66.37歳、女性69.07歳。高齢になれば当然、併存症も多くなる。急変時に、普段から顔見知りで病状をよく知っている透析クリニックの医師が往診してくれれば安心だと思う高齢透析患者は、少なくないだろう。

 支援診は、24時間体制で往診や訪問看護を実施する診療所。2006年の医療法改正で新設された。自宅でのターミナルケアや慢性疾患の療養などへの対応に期待が寄せられている。要件として、24時間連絡を受ける医師または看護職員を配置する、24時間往診・訪問看護が可能な体制を確保する、当該診療所または他の医療機関において在宅療養患者の緊急入院を受け入れる体制を確保する――などがある。

 これらの要件を満たすことは簡単ではないが、診療報酬面で優遇措置を受けられる。届出数は年々増加しており、2010年10月1日現在1万2552件。全診療所の13%に相当する。ただし、十分活動できている診療所は多くない。1カ月で時間外往診なしが42%、6カ月で在宅での看取りなしが45%という調査結果もある。

 若井氏は、透析クリニックが支援診の機能を併せ持つことによるメリット、デメリットを報告した。メリットとしては、まず、24時間対応の往診・訪問看護体制により、切れ目のない医療を提供できるため、患者の安心感が増し、また透析患者の入院回数を減らすことが可能になるとした。同クリニックに定期通院している透析患者の約20%から、夜間・休日・非透析日に往診の依頼があり、往診による早期対応で好転した症例も見られた。

 また、往診・訪問看護が功を奏し、入院を回避できたと考えられた症例を開業後の14カ月間で3例経験した。訪問して知り得た家庭環境などから、透析患者のリン高値などの原因を推察し、対策を考えることもできた。

 さらに、在宅血液透析患者(現在17人で実施または実施予定)への対応能力が高くなることもメリットだとした。なお、往診や訪問看護は、定期的なものよりも、火傷や肺炎といった疾患の治療やケアで1〜2週間集中的に訪問するといったケースが多かった。

 第2のメリットは、既存の在宅医療ネットワークに比較的スムーズに参加でき、地域の基幹病院や医療・介護施設との連携を強化することが可能になること。透析クリニックだけでは、地域のネットワークになじむのに時間がかかる。そのほか、診療報酬面の優遇や、多彩な症例を経験できることで診療所スタッフの能力が向上するといった効果も期待できるとした。

 一方、デメリットは、担当スタッフの負担が大きいこと。常勤医師1人の体制では難しく、非常勤医師の応援が不可欠となる。また、在宅医療そのものによる採算性はあまり高くない。このため、透析クリニックとの複合による相乗効果を目指さないと、患者にとっても、経営的にもメリットを生み出しにくいとのことだ。

 これらを踏まえた上で若井氏は、「施設の負担は大きいが、透析クリニックが支援診として機能することによるメリットは多く、患者によりよい医療を提供できる可能性がある」と評価した。

(日経メディカル別冊編集)