東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科の小倉誠氏

 最近発表された「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」でも、透析患者の家庭血圧を重視している。横浜で開催されている日本透析医学会で、東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科の小倉誠氏(写真)は、血液透析(HD)または腹膜透析(PD)患者においても、朝の家庭血圧高値は心肥大心血管イベントの有意なリスクになっており、長期的な血圧管理の指標として有用であると報告した。

 今回小倉氏らは、HDおよびPD患者の血圧管理状況を解析し、左室肥大や心血管イベントとの関連を検討した。

 HD患者の検討では、2006年10月1日の時点で同大学附属柏病院と新柏クリニックでHDを施行し、薬剤による高血圧管理を行っている患者49人を対象とした。ベースラインの患者背景は、平均年齢63歳、男性57.1%、平均透析期間6.2年、糖尿病32.6%などで、比較的コントロールされている集団だった。Ca拮抗薬は全例に、アンジオテンシン受容体阻害薬(ARB)も57.1%で投与されていた。

 血圧の測定ポイントは、(1)透析日朝、(2)来院時(透析前)、(3)透析日就寝前、(4)非透析日朝、(5)非透析日就寝前――の5点。家庭血圧については、上腕測定用のオシロメトリック法あるいはコルコトフ法による血圧計を用いて、患者が測定した。また透析開始時の血圧は、来院時に座位で患者が測定した。

 解析対象とした血圧値は、追跡開始時の10月1日から3週間。ベースライン時における左室肥大との関連を見たほか、心血管イベントについては5年間追跡した。

 収縮期血圧について見ると、透析日朝が155.8mmHg、来院時が152.8mmHg、透析日就寝前が152.3mmHg、非透析日朝が150.9mmHg、非透析日夜が156.1mmHgだった。透析日朝と非透析日朝の間には、有意差があった。また来院時血圧と、それぞれのポイントで測定した家庭血圧との間には、いずれも有意な相関は見られなかった。

 左室重量係数(LVMI)と各測定ポイントの収縮期血圧との相関を調べたところ、来院時との間では有意ではなかったが、透析日朝(r=0.50、p<0.01)および非透析日朝(r=0.41、P<0.01)の家庭血圧において、それぞれLVMIと有意な正の相関を認めた。重回帰分析でも、透析日朝または非透析日朝の家庭血圧は、左室肥大の有意な因子となっていた。

 心血管イベントについては3年と5年の2ポイントで評価した。3年および5年の時点で心血管イベントの発生と有意な関連がみられたのは透析日朝の血圧値で、10mmHgの上昇による相対リスク(RR)は3年時点では2.02、5年時点では1.82だった。これ以外に、5年次点で糖尿病が有意なリスクとなった(RR:7.01)。

 次にPD患者33人を対象に同様な検討を行った。家庭血圧は、来院日とその前日の朝に測定し、その平均値を用いた。外来収縮期/拡張期血圧および家庭収縮期/拡張期血圧と左室重量(LVM)との相関を見ると、家庭収縮期血圧のみ、有意な相関を認めた(r=0.508、p=0.0022)。同様に多変量解析から、左室肥大と関連する因子として有意だったものは、家庭収縮期血圧だった。

 さらに家庭収縮期血圧を135mmHg未満群(15例)と135mmHg以上群(18例)とに分けて135mmHg以上群における左室肥大のリスクを調べたところ、そのオッズ比は15.91と、朝の家庭血圧高値は左室肥大の強いリスクとなっていることが明らかになった。

 これらの結果を基に小倉氏は、「HDおよびPD患者の長期的な血圧管理においては、朝の家庭血圧値がその指標として有用だ」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)