ガイドライン作成ワーキンググループ・タスクフォースの山本裕康氏

 日本透析医学会は現在、血液透析の導入基準や具体的な実施法に関するガイドラインの策定作業を進めている。その中に付記として、慢性血液透析療法への非導入および継続中止に関する提言が盛り込まれることになった。横浜で開催された日本透析医学会(JSDT2011)の学術委員会企画「血液透析導入と透析処方に関するガイドライン策定に向けて」の中で、同ガイドライン作成ワーキンググループ・タスクフォースの山本裕康氏が、これまでの経緯や国内外における非導入・継続中止に関する現状を紹介した。ワーキングループは今後、具体的な提言案の作成に着手するが、その公開時期などはまだ未定だ。

 同学会は臨床ガイドラインをこれまでにも多く作成・発表してきたが、その本丸とも言うべき血液透析療法のガイドラインは、まだ作成されていなかった。気運の高まりを受け2009年にワーキンググループが組織され、議論が始まった。

 その中で、透析患者の高齢化といった現状を踏まえ、非導入や継続中止についても学会として一定の見解を示すべきではないかということになり、提言として付記することが決まったという。

 2009年に透析導入された患者の平均年齢は67.3歳、全透析患者の平均年齢は65.8歳となった。1983年は、導入時の平均年齢は51.9歳、全患者の平均年齢は48.3歳だった。この15年で導入時年齢は15.4歳、全患者では17.5歳も高齢化したことになる。

 このような高齢化や糖尿病を原疾患とする患者の増加にもかかわらず、わが国の透析医療の成績は良好だ。だが、腎移植が適用されない限り慢性維持透析は永続的に継続しなくてはならない。それだけに、透析療法が延命療法の側面も有するようになっている。

 重篤な心血管合併症や末期の悪性腫瘍の存在、長期臥床状態、透析療法が理解できない、不穏などにより安全に透析を実施できない、家族の支援が得られないといった、解決が困難な問題をかかえる患者の増加にどう対応すればよいか、現場の悩みは深い。

 現在、日本透析医学会の統計では、自殺または透析拒否による死亡は全死因の1.1%。だが米国では「透析中止による死亡」が22%を占める。米国がこのように多い理由は不明だが、重篤な心血管合併症など透析以外の身体的問題を抱える患者が多いことも一因とみられる。日本の数字は少ないが、潜在化している可能性もある。

 一方、透析を導入しないという非選択率については、米国では5%未満、イギリス・カナダでは16%という研究結果がある。

 米国では既に2001年、Renal Physicians AssociationとAmerican Society of Nephrologyが共同で、透析非導入および中止のガイドラインを作成している。一方、わが国では、厚生労働省による終末期医療全般に関するガイドラインはあるが、透析医療に特化したものではない。この問題に先験的に取り組み、本ワーキンググループの顧問も務める札幌北クリニックの大平整爾氏が公表している私案が、ほぼ唯一のものだ。

 ワーキンググループでは今後、患者団体や法律の専門家も加わった公開の場で討論し、時間がかかっても社会的なコンセンサスを形成した上で指針案をまとめるとしている。

(日経メディカル別冊編集)