新潟大学大学院腎泌尿器病態学の中川由紀氏

 献腎移植が少ないわが国では、ドナー適応拡大の切り札としてABO血液型不適合腎移植が早くから注目され、多くの症例に実施されてきた。近年、最大の課題とされた抗体関連型拒絶反応(AMR)も、免疫抑制療法の進歩により解決の道が開け、期待はさらに高まってきた。横浜で開催された日本透析医学会(JSDT2011)では、新潟大学大学院腎泌尿器病態学の中川由紀氏(写真)らが、抗体産生にかかわるB細胞を抑制するリツキシマブ導入前後の成績を比較。同薬導入後は脾臓摘出を行うことなく良好な生着率が得られ、AMRの発生率も低減できたと報告した。

 わが国でABO血液型不適合腎移植が最初に実施されたのは1989年。以来、術前の血漿交換に加え、脾摘を行うというストラテジーが長く踏襲されてきた。しかし、リツキシマブの導入で新たな時代に入った。

 ABO血液型不適合腎移植では、ドナー血液型抗原を認識する抗A抗B抗体によるAMRが、移植後成績を悪化させる重要な原因とされていた。だが、抗CD20ヒトマウスキメラ型モノクローナル抗体であるリツキシマブを減感作療法に用いることにより、脾摘を行わずに、AMRを回避し、免疫学的順応(accommodation)を誘導できることが明らかになった。

 中川氏らは今回、これまでにABO血液型不適合腎移植を行った61例をリツキシマブ導入前後で分け、成績を比較した。対象は、移植をリツキシマブ導入前の1996年4月〜2004年8月に行った19例(Group 1)と、導入後の2004年9月〜2010年2月に行った42例(Group 2)。

 Group 1では、免疫抑制薬としてカルシニューリン阻害薬(CNI)、低用量メチルプレドニゾロン(MP)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)の投与に加え、全例で脾摘を実施した。

 Group 2では、CNI、低用量MP、MMFを移植1カ月前から投与するとともに、リツキシマブを14日前と前日に投与した。脾摘は行わなかった。この2群間で、年齢、男女比、透析期間、ABO血液型分布に有意差はなかった。

 抗血液型抗体価は、Group 2で術前最大2000倍以上、移植時も256倍の症例が含まれていたが、術後1カ月、6カ月では、Group 1とほぼ同等のレベルに低下していた。3年生存率はGroup 1で95%(1例でgraft loss)、Group 2で100%。3年生着率はGroup 1では68%だったが、Group 2では98%と明らかに向上した。

 また、急性拒絶反応の発生率は、Group 1の68%に比べ、Group 2では19%と、有意に低下した。急性AMRも16%に対し2%に減少した。

 リツキシマブの投与量は徐々に減らしており、当初の375mg/m2×2から100mg/m2、さらに最近は100mg/bodyとしている。この減量に伴い、Bリンパ球の回復が早くなり、急性拒絶反応はそれぞれ38%、27%、11%と減少した。当初の投与量では8%に発生した急性AMRも、100mg/m2または100mg/bodyとしてからはまったく認められなくなったという。
 
(日経メディカル別冊編集)