川島病院の島健二氏

 2010年に新規透析導入された患者の43.5%が糖尿病腎症を原疾患とし、全透析患者に占める糖尿病腎症の割合も35.8%となった。もはや透析医療にとって糖尿病の管理は避けて通れない問題となっている。横浜で開催されている日本透析医学会のコンセンサスカンファランス「透析患者の糖尿病治療ガイドライン」で川島病院(徳島市)の島健二氏(写真)は、自施設での長期観察研究に基づき、透析患者における血糖コントロール目標値として透析前血糖値で180mg/dL以下、グリコアルブミンであれば24%以下が望ましいというステートメント案を示した。

 この値は、川島病院で行われた観察研究の結果に基づいたもの。本研究の対象者は、1995年1月1日〜2004年12月31日に血液透析を導入し、2005年12月31日まで追跡された糖尿病患者245人(男性188人、平均年齢61.9歳)。透析前血糖値は週1回、HbA1cやその他の血液生化学、血圧などは月1回測定し、その値を追跡した全期間で平均し、生命予後との関連を調べた。

 ベースライン時の血糖値などと生命予後との関連を見た報告は他にもあるが、本研究では、死亡または追跡終了までの全期間の血糖値の平均と生命予後との関連を見た研究であることが特徴という。

 まず対象患者の平均血糖値を(1)160mg/dL未満、(2)160mg/dL以上180mg/dL未満、(3)180mg/dL以上200mg/dL未満、(4)200mg/dL以上220mg/dL未満、(5)220mg/dL以上――の5群に分け、Kaplan-Meier法により生存曲線を求めた。その結果、160mg/dL未満群に比べ180mg/dL以上200mg/dL未満群およびそれ以上の群では、有意に生存率が低下していた。

 また生存時間に対するCoxの回帰分析から、160mg/dL未満群を1としたときの各群のハザード比を求めたところ、単変量解析・多変量解析ともに、180mg/dL以上200mg/dL未満群より高い群で有意に高値となり、予後不良であることが示された。

 一方、HbA1cについては、(1)6.0%未満群、(2)6.0%以上6.5%未満、(3)6.5%以上7.0%未満、(4)7.0%以上――の4群に分けKaplan-Meier法による生存曲線を求めたが、6.0%未満群に対して有意な生命予後の悪化を認めた群はなかった。島氏らの別の検討では、透析患者のHbA1cは腎機能正常者より1.5〜2%低く出るという。これらの結果をあわせステートメント案でも、透析患者の血糖コントロール指標としてHbA1cは「参考程度」とされた。

 HbA1cが使えない場合の血糖コントロール指標として有望視されているのがGAだ。だが本研究では研究開始が1995年と早かったことから、開始時はGAを測定しておらず、GAで予後不良となる閾値を明らかにすることはできなかった。そこでワーキンググループのメンバーが属する施設の患者909人を対象とした検討を行い、血糖値180mg/dLに相当するGA値は23.6%と算出された。これから、GAでの目標値は24%と定められた。

 なお、本観察研究の対象となった患者の透析開始は食事からほぼ2時間が経過していることから、透析前血糖値とは食後約2時間の値と考えてよいとの見解も示した。

 今回のコンセンサスカンファランスではこれ以外にも、血糖管理のための測定項目と頻度、透析液ブドウ糖濃度、透析中の高血糖・低血糖への対処、インスリン療法、経口血糖降下薬の使用法、食事エネルギー量、合併症管理などで案が示された。今後、今回の議論を踏まえた案が学会ホームページに公開され、パブリックコメントを求めた上でまとめられる。

(日経メディカル別冊編集)