そこで庄司氏らは、non HDLコレステロール(non HDL-C)と頸動脈内膜中膜肥厚度(IMT)との関連を、まず検討した。透析患者を含む897例を対象とした重回帰分析から、その肥厚に有意に関連する因子として、年齢、性(男性)、収縮期血圧、喫煙、腎不全、糖尿病とともに、non HDL-Cも認められた。

 また透析患者における大動脈脈波速度(PWV)の検討でも、重回帰分析においてnon HDL-C高値は大動脈PWV上昇と有意に関連していた。「これらはあくまで断面研究だが、頸動脈IMTや大動脈PWVとnon HDL-Cとの間に、関係の逆転はみられなかった。脂質異常は腎不全の動脈硬化に関与していることに疑いはない」と庄司氏。

 さらに日本透析医学会が行っている統計調査用の患者データベースから、条件を満たし血清脂質値の情報に欠落がない透析患者4万5390人のデータを抽出。心筋梗塞、脳梗塞、脳出血の発症を評価項目とする1年間の追跡研究を行った。設定されたコホートのベースラインの患者背景は、年齢61.4歳、男性59.1%、透析歴91カ月、糖尿病25.5%などで、日本の透析患者を代表するものということができた。

 このコホートでまず、HDL-Cとnon HDL-Cをそれぞれ四分位し、16の群に分けて心筋梗塞の発症リスクを見た。その結果、年齢、性別、糖尿病の有無、透析年数といった基本的な項目だけでなく、BMI、血清アルブミン、血清CRPといったMIA症候群に関連する因子も加えて補正後も、HDL-Cが低値な分位で心筋梗塞の発症リスクが高く、またnon HDL-Cでは高値の分位で同リスクが高くなっていた。

 HDL-Cが最も高く、non HDL-Cが最も低い分位のリスクを1とすると、HDL-Cが最も低く、non HDL-Cが最も高い分位のリスクは2.9と高値だった。また重回帰分析の結果、non HDL-Cの1mmol(38.7mg/dL)の上昇は心筋梗塞発症のリスクを1.24倍、有意に上昇させることが明らかになった。これは、一般的なメタ解析で報告されているリスク幅と同程度という。

 一方、同じコホートで心筋梗塞、脳梗塞、脳出血を発症した患者について、その死亡に関連している因子を重回帰分析で求めたところ、年齢、BMI(低値)、CRP(高値)が有意となる一方、HDL-Cやnon HDL-Cは有意な因子とはならなかった。加齢、低栄養、炎症は、発症後の致死リスクとは関連することが確認できたわけだ。

 これらの結果から庄司氏は「若干のクロスオーバーはあるが、脂質異常や高齢、男性といった古典的危険因子は、透析患者でもCVD発症リスクに関与している。一方、炎症や低栄養といったMIA症候群に関連する非古典的な危険因子は、CVD発症者の致死リスクに関与している。つまり透析患者においてもnon HDL-C高値やHDL-C低値は動脈硬化の促進因子であり、低栄養が動脈硬化を促進するものではない。一方で低栄養は致死率を高めることを介して心血管死のリスクを上昇させていると考えられる」とまとめた。

(日経メディカル別冊編集)