桃仁会病院(京都市)の今井亮氏

 糖尿病性腎症透析患者における下肢閉塞性動脈硬化症PAD)の発生率は、25%と予想以上に高いことが報告された。5年間の前向き臨床研究により明らかになったもので、桃仁会病院(京都市)の今井亮氏(写真)らが、横浜で開催される日本透析医学会(JSDT2011)で発表した。

 今井氏らはPADの発生率や有病率、下肢の予後などを検討するため、2005年から前向き臨床研究を実施した。観察期間は5年間で、PADの発生率および有病率、経過と転帰、PAD合併患者の生命予後などを調べた。

 対象は桃仁会病院において、2005年度に通院透析中だった糖尿病性腎症透析患者193人。男性が119人、女性が74人で、平均年齢は62.9歳(33〜89歳)、平均透析歴は5.90年(0.1〜27年)だった。PADの診断は、(1)ABI(足関節上腕血圧比)≦0.9あるいはABI>1.4、またはSPP(皮膚灌流圧)<50mmHG、TBI(足趾/上腕動脈血圧比)<0.6である、あるいは(2)1.4≧ABI>0.9で下肢のしびれ、疼痛、間欠跛行などの症状がある――のそれぞれに該当する患者について、さらに下肢動脈超音波検査を実施し診断した。

 検討の結果、2005年度に通院透析中の糖尿病性腎症透析患者193人中、71人がPADと診断され、その有病率は36.8%だった。性別は男性47人、女性24人と男性に多く、平均年齢は65.8歳(51〜89歳)、平均透析歴は7.0年(0.3〜27年)だった。進行の程度を示すFontaine分類では、F-Iが48人、F-IIが20人、F-IIIが1人、F-IVが2人で、潰瘍や壊疽が11人(15%)に合併していた。無症候性の症例が多いことが特徴の1つで、症候性の2.4倍に上っていた。

 2005年時点でPADと診断された糖尿病性腎症透析患者71人のうち重症下肢虚血(CLI)3人を除いた68人では、5年間経過を観察できたのは37人だった。脱落患者は31人で、死亡が23人、転院2人などだった。37人の転帰は、安定が10人(27%)、進行が22人(59%)、CLIが5人(14%)となり、糖尿病性腎症透析患者ではPADの進行(27人、73%)が早く、また重症化しやすいという傾向を認めた。

 PADの発生率については、2005年時点でPADを発症していなかった糖尿病性腎症透析患者122人のうち、5年間経過を観察できた83人を対象とした。このうちPADを発症したのは、21人(25.3%)となった。つまり、5年間の発症率は25%となり、毎年20人に1人が発症していることが分かった。

 生命予後については、糖尿病性腎症透析患者の全体では5年間の死亡率は19.1%だった。PADの有無で見ると、PADを発症していなかった患者の死亡率は10.7%だったのに対し、PADを発症していた患者では33.8%と高率だった。PAD患者の死因別では、冠動脈疾患(CAD)による死亡が10例と突出していた。

 今井氏らは今回の検討結果をもとに、「糖尿病性腎症透析患者では、予想以上にPADの発生率が高く、しかも進行する頻度も73%と高く、重症化する傾向も強いことが分かった」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)