熊本大学大学院神経精神医学分野の福原竜治氏

 初老期に発症する変性性認知症疾患の中で、前頭側頭葉変性症(FTLD)はアルツハイマー病に次いで頻度が高いとされる。これまで、その家族性発症の地域差については十分に検討されていなかった。今回、アジア5カ国の国際共同研究の結果と欧米における先行研究との比較から、アジア人では欧米人に比べてFTLDの家族性発症が少ないことが示された。11月8日から10日に長野県松本市で開催された日本認知症学会(JSDR2013)で、熊本大学大学院神経精神医学分野の福原竜治氏らが報告した。

 欧米ではFTLD患者の30〜50%は家族歴を有すると報告されているが、我が国を含むアジア諸国では、家族性のFTLDは、より少ないとする報告が多い。そこで福原氏らは、国際共同多施設研究を実施してアジアにおけるFTLD患者の家族歴を調べ、欧米人の報告と比較検討することにした。

 調査実施施設はインド、インドネシア、日本、フィリピン、台湾の5カ国6施設で、各施設に通院しているFTLD患者を登録した。FTLDに含まれる疾患として、FTD(前頭側頭型認知症)、FTD-運動ニューロン疾患型(MND)、意味性認知症(SD)、進行性非流暢性失語(PNFA)、大脳皮質基底核症候群(CBS)、進行性核上性麻痺(PSP)を対象とし、同一家系内の患者が複数いた場合は1人のみ登録した。信頼できる情報提供者(配偶者、親兄弟など)から家族歴を聴取し、Goldman's Scoreで家族性の程度を判定して、結果を欧米の先行研究のデータと比較した。

 対象は合計91例。国別の内訳はインド39例、インドネシア4例、日本18例、フィリピン7例、台湾23例で、男性49例、女性42例、発症年齢は61.5歳、罹病期間は3.7年だった。

 疾患の内訳はFTDが42例(46.2%)、FTD-MNDが2例(2.2%)、SDが22例(24.2%)、PNFAが15例(16.5%)、CBSが6例(6.6%)、PSPが4例(4.4%)で、国別の比較では、日本と台湾でSDの比率が高かった。

 FTLD患者91例のうち30例(33.0%)の親族に、FTLDに含まれるいずれかの疾患、あるいは何らかの認知症が認められたが、明らかな家族歴が認められたのはFTDとFTD-MNDの患者のみだった。

 Goldman's Scoreで常染色体優性遺伝と判定されたのはFTDの1例のみで、全体に占める割合は1.1%、FTDに占める割合は2.4%だった。家族内集積はなく、第1度近親者にFTLDがいる患者は2例(2.2%)に留まった。

 福原氏は、FTLDの家族歴に着目した欧米の疫学調査では、家族性FTLDの割合が40%前後とする報告が多く、常染色体優性遺伝のFTDが18〜36%を占めるというデータを提示し、「アジア人のFTLD患者の家族歴保有率は欧米人に比べて低く、常染色体優性遺伝パターンを示すFTDの割合も2.4%と低かった」と結論し、「FTLDの発症に関わる分子遺伝的研究や環境要因に関する研究が発展することが望まれる」と締め括った。