平塚共済病院神経内科の中江啓晴氏

 急性の一酸化炭素中毒による意識障害からいったん回復した後、数日から1カ月程度の期間を経て、認知機能障害などを呈する間歇型一酸化炭素中毒が知られている。高圧酸素療法が有効で「治療可能な認知症」だが、急性期の経緯が明らかでないと初期診断に難渋する場合がある。11月8日から10日に長野県松本市で開催された日本認知症学会で、平塚共済病院神経内科の中江啓晴氏らが症例報告した。

 患者は感染症のため、自院内科に入院したが、入院後に意思疎通困難、行動異常、尿失禁、アテトーゼ様(ゆっくりねじるような動き)の不随意運動などを呈し、急速進行性の認知機能障害として、入院8日目に神経内科転科となった。

 その後も症状は進行し、入院13日目には口をすぼめるような不随意運動が出現し、四肢の舞踏様運動も増加した。入院18日目と入院7日目の脳MRI画像を比較したところ、18日目の拡散強調画像(DWI)やFLAIR画像に、7日目には見られなかった白質病変(傍側脳室、半卵円中心の高信号)が出現した。

 しかし、一般検査所見に目立った特徴はなく、氏名、年齢、日付、場所のいずれも返答に詰まるようにして答えられず、MMSEも実施困難。家族が疎遠で詳細な病歴聴取が困難なため、診断に難渋していた。

 入院21日目になって、たまたま患者の知人から病歴を聴取でき、患者が一酸化炭素曝露後、他院で急性一酸化炭素中毒と診断され、10日間の加療後、自宅退院になっていたことが分かった。その退院後、行動異常などが目立つようになり、認知機能障害が出現していたという。

 こうした病歴聴取と臨床経過、画像所見から、間歇型一酸化炭素中毒と診断し、高圧酸素療法目的で、入院22日目に大学病院に転送した。

 中江氏は、「偶然、知人の話を聞けなければ、間歇型一酸化炭素中毒が治療可能であるにもかかわらず、おそらく診断がつかなかった。認知症の診療には病歴聴取が非常に重要であることを再認識した」と考察した。