藤田心ケアセンターの近藤奈緒子氏と共同研究者で藤田保健衛生大学歯科の金森大輔氏

 認知症患者では不顕性誤嚥を伴うことが少なくないが、家族への食事状況聞き取りなどでは見落とすことも多い。藤田心ケアセンターの近藤奈緒子氏らは、比較的侵襲度の低い複数の嚥下スクリーニング検査法を評価し、ネブライザーを用いた簡易な咳テストが有用であることを、11月8日から長野県松本市で開催されている日本認知症学会(JSDR)で報告した。

 認知症患者では嚥下に問題を持っている場合が多く、特に咽頭感覚の低下によるむせのない不顕性誤嚥があると発見が遅れる。緊急入院時などに、家族に漫然と食事状況を聞き取るだけでは見逃すリスクが大きいため、嚥下スクリーニング検査の実施が望ましい。

 そこで近藤氏らは、比較的簡易で侵襲度の少ない嚥下検査手法である咳テスト、改訂水飲みテスト(MWST)、簡易嚥下誘発試験(SSPT)の3検査について、有用性の比較を試みた。

 咳テストは超音波ネブライザーから1%クエン酸生理食塩水を1分間吸入させ、咳の有無を観察。MWSTは、3mLの水を口腔前庭に注いで嚥下を指示し、嚥下、むせ、呼吸状態を評価した。またSSPTは、5Frのチューブを鼻腔から13cm挿入し、チューブから0.4mLおよび2mLの蒸留水を注入し、嚥下誘発の有無と出現までの時間、むせの有無を観察した。

 対象は2012年4月から2013年3月までに自院認知症救急病棟に入院し、認知症行動・心理症状(BPSD)は存在しても検査の支障にならない認知症患者30人とした。平均年齢は79歳、男性13人、女性17人で、MMSEは11.9点だった。

 あらかじめ嚥下造影検査を実施し、これをゴールドスタンダードとして各検査を評価した。造影検査の結果は誤嚥なしが18人、ありが12人で、誤嚥ありのうち6人が顕性、6人が不顕性だった。

 咳テストは、原法では1分間に咳が4回以下だと不顕性誤嚥ありと判定するが、今回、3回以下で不顕性誤嚥ありとする改変法についても評価した。結果は、原法では感度100%、特異度33%だったが、改変法では感度83%、特異度67%と改善し、簡易でありながら十分な精度がある検査法であることが示唆された。

 MWSTは不顕性誤嚥が存在する場合、検出力が悪く、対象者によっては不向きだった。またSSPTは、反射惹起遅延の有無で不顕性か否かを判定できる可能性は示唆されたものの、検査の不快さから実施困難な症例が多かった。

 咳テストは医師以外でも実施可能という利点もあり、精度も十分だが、認知症患者では、ネブライザーの蒸気を吸うという指示の理解が困難だったり、1分間の検査中、集中力を維持できない例があり、口呼吸の練習や吸入アタッチメントをマスクに替えるなどの必要性が指摘された。

 近藤氏は「今後、症例数を増やし、複数の検査の組み合わせについても評価していきたい」と述べた。また、共同研究者で藤田保健衛生大学歯科の金森大輔氏は、「肺炎を防ぎ、QOLを維持するため、入院時には来院早期に不顕性誤嚥を発見して対策を手配することが重要」と総括した。