大阪大学大学院臨床遺伝子治療学講座の里直行氏

 糖尿病はアルツハイマー病(AD)発症の危険因子として注目されている。しかし、そのメカニズムについては詳細が明らかになっていない。ADになる運命にあるAPP トランスジェニックマウス(APP Tg)、およびAPP Tgと糖尿病マウスを掛け合わせたAPP+ob/ob(いずれも18カ月の高齢マウス)を用いてタウのリン酸化の亢進を比較検討したところ、APP+ob/obで最もタウのリン酸化が亢進していることが確認された。11月8日から長野県松本市で開催されている第32回日本認知症学会(JSDR2013)で、大阪大学大学院臨床遺伝子治療学講座の里直行氏らが発表した。

 ADの発症過程では、Aβ蓄積(老人斑)形成後、タウのリン酸化が亢進し神経原線維変化を起こし、最終的に神経細胞死に至るとされる。このタウのリン酸化の過程に対する糖尿病の影響を調べるために、野生種、APP Tg、APP+ob/ob、ob/obの4種類のマウスについて、いずれも高齢の18カ月齢で検討を行った。APP+ob/obは、脳アミロイドアンギオパチーが見られ、他群よりも脳インスリン値が低かった。

 脳内でのタウのリン酸化を免疫組織染色で確認したところ、4種類のマウスのうちAPP+ob/obで著しくリン酸化が亢進しているのが確認された。

 一方、糖尿病が老人斑形成に及ぼす影響について、野生種マウスに6カ月間の高脂肪食負荷を行って検討した。その結果、一部の野生種においては、高脂肪食負荷マウスは通常食マウスよりも脳内Aβ40が有意に増加したが、Aβ42については有意な増加が見られなかった。

 里氏は、「Aβの蓄積のみではADには至らず、次のステップとされるタウのリン酸化亢進がその発症には必要だが、今回の結果から、加齢と糖尿病がタウのリン酸化過程を促進させる可能性が示唆された」と話した。