国立長寿医療研究センター在宅連携医療部神経内科の山岡朗子氏

 高齢化に伴い、一般心療科でも常時、認知症患者を扱うようになっているが、老年科、精神科などの認知症関連診療科以外の一般勤務医に対する啓発の取り組みは遅れている。国立長寿医療研究センター在宅連携医療部神経内科の山岡朗子氏らは、一般の病院勤務医に対する教育プログラムのプロトタイプを作成、11月8日から10日まで長野県松本市で開催されている日本認知症学会(JSDR2013)で試行の成果を報告した。最も関心が高かった項目は「疑うポイント」など患者拾い上げに関するものだったという。

 厚生労働省は、開業医に対しては「かかりつけ医認知症対応力向上研修」を実施、2006年度から2011年度までの5年間に2万9150人が修了した。上位に相当する「認知症サポート医」研修も併せて実施、2005年度から2011年度に1677人を養成している。

 しかし、一般心療科の勤務医に対しては、こうした全国規模の啓発の取り組みは行われておらず、いわば、「取りこぼし」状態になっていた。

 国立長寿医療研究センターは開業医に対する厚労省の認知症教育プログラム開発に関わっている。山岡氏らはそのノウハウを生かして、一般病院勤務医の認知症対応力向上を目指す教育プログラムのプロトタイプを開発。200床弱の2病院で教育プログラムを実施、教育効果を検証した。

 パイロット版の教育プログラムは医師向けの1時間強程度のスライド教材で、(1)認知症の特性、(2)認知症の治療、(3)認知症を病棟でみる、(4)認知症を地域でみるという4部構成、10パートから成る。これをA病院(199床、うち129床が一般病床)とB病院(149床、全て一般病床)で実施。講義直後と1カ月後にアンケートでプログラムを評価してもらった。

 医療機関側の希望で他職種も受講した。A病院では27人(医師9人、看護師11人、他7人)、B病院では28人(医師12人、看護師6人、他10人)が受講した。

 アンケート調査の結果、認知症患者への対応機会については、全回答者の72.5%が「ほぼ毎日」と答え、認知症患者の対応が日常的になっていることが示された。

 プログラムの10パートについて、講義直後に4段階で今後の活用意識を尋ねたところ、「疑うポイント」については57.4%が「活かせそう」、42.6%が「まあまあ活かせそう」と回答した。「活かせそう」の比率は、「スクリーニング」で55.1%、「認知症の特徴」で47.9%、「ADとDLBの特徴」で45.8%の順で、診断や鑑別に関する内容に関心が集まった。

 一方、講義直後に理解度を、また1カ月後に診療での実践状況を尋ねたところ、例えば「疑うポイント」は、講義直後には54.9%が「よく理解できた」としていたのに、1カ月後に「(実践)できていた」としたのは7.8%に過ぎず、他のパートも同様の傾向だった。

 これらの結果について山岡氏は、「認知症に関連しない診療科の医師にとって、得た知識をすぐに実践する機会は乏しいことが分かった。そのため、啓発を繰り返すことが重要だ。将来的には、開業医向けプログラムと同様、国などが推進するプログラムにできることが望ましい」と抱負を語っていた。