京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻の谷川貴則氏

 脳全体の萎縮(全脳萎縮)と認知機能との関連を横断的、縦断的に調べたところ、全脳萎縮とMMSE、およびMMSEの1年後変化率とは有意な相関を示し、全脳萎縮は認知機能低下の早期指標として活用できる可能性が示唆された。11月8日に長野県松本市で開幕した第32回日本認知症学会で、京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻の谷川貴則氏らが発表した。

 対象は、京都大学病院老年内科の通院患者で軽度認知機能障害(MCI)またはアルツハイマー病(AD)の診断を受けている182人(75.3歳、女性71.4%)。全脳萎縮はMRI画像VSRAD(advance)により算出し、認知機能はMMSEで評価した。

 対象者の全脳萎縮の平均値は5.7%、ベースラインでのMMSEは22.8だった。MMSEと脳萎縮の関連を調べるために重回帰分析を実施したところ、両者に有意な相関関係が見られ、全脳萎縮の割合が大きいほど、MMSEは低値となった(β=−0.418、P<0.001)。

 次に、1年後にMMSEを測定できた51人について、MMSE変化率を(1年後値−ベースライン値)/ベースライン値×100で算出し、脳萎縮との関連をみた。

 その結果、全脳萎縮とMMSE変化率に有意な相関関係が示された(β=−0.296、P=0.035)。海馬などのある関心領域、灰白質、白質について、同様にMMSE変化率との関連を調べたが、いずれも有意な関連は見られなかった。

 谷川氏は、「今回の結果から、全脳萎縮の程度によって、認知機能の予後予測が可能であることが示唆された。包括的に脳全体の萎縮を考慮することで、現時点および予後を適切に判断できるのではないか」と語った。