悪性グリオーマ患者に対する硼素中性子捕捉療法(BNCT)およびフッ素ラベルしたBPAを用いた18F-BPA-PETは、生存期間中央値(MST)の有意な改善をもたらしている。10月28〜30日に名古屋市で開催された第67回日本癌学会学術総会で大阪医科大学脳神経外科の宮武伸一氏が報告した。

 BNCTは、硼素が熱中性子を補足してリチウム核とα粒子に分裂する反応を利用した治療法だ。腫瘍細胞に硼素化合物を取り込ませ、熱中性子を照射することにより、周辺組織には傷害を与えずに腫瘍細胞を内部から破壊するというもの。

 臨床試験で使用される硼素化合物にはBSH(sodium borocaptate)とBPA(硼素化フェニルアラニン)がある。BSHは脳血流に入っても正常細胞には送達されず、ガドニウムで造影された部位のみに取り込まれる。BPAは増殖したsub populationに活性を示す一方で、一部は正常細胞にも取り込まれる。

 BNCTの治療薬であるBPAをフッ素ラベルしたF-BPAをトレーサーとした18F-BPA-PETによりBNCTの有効性を確認できるため、宮武氏らは治療前後にこの方法を採用している。PET検査を行うと同時に治療効果をもたらす点が特徴である。

 宮武氏は一例として、再発性の多型グリア芽細胞腫(GBA)で重度の感覚失語症があった患者をあげた。BNCTの施行1週間後、この患者の腫瘍は縮小し、会話をしながら自力歩行で退院できるまでに顕著に改善した。

 悪性グリオーマの治療戦略として、BNCT(1回線量:腫瘍>40Gy、脳<15Gy)と放射線外部照射(EBRT)の boost(20〜30Gy)が推奨される。

 同氏らは、BNCT未施行群27人、BNCT施行群10人、BNCTに放射線照射のboostを追加した群11人を対象とした調査を行っている。

 その結果、MSTは、BNCT未施行群10.3カ月、BNCT施行群15.7カ月、BCNTに放射線照射を追加した群23.5カ月であった。未施行群に比べて施行群および追加群は有意にMSTを延長した(p=0.0035)。BNCTのハザード比は0.399であった(p=0.0038)。

 同施設で行ったBNCTの施行症例数は、1995〜2000年は年間10例未満であったが、2005年には70例を超え、この治療方法に期待が寄せられていることがわかる。同氏らは加速器中性子源による中性子捕捉療法の治療スケジュールも計画しているという。