今年の日本癌学会学術総会は、日本癌治療学会総会と同時期に同じ名古屋で開催された。その前後に開催される関連集会を加えると、約3カ月にわたって癌に関する議論が続けられることになる。その意義を、癌学会の会長を務めた上田龍三氏にうかがった。

名古屋市立大学大学院 腫瘍・免疫内科学教授の上田龍三氏

――今年の癌学会学術総会は、癌治療学会と同時期に同じ会場で開催されました。

上田 私としては同時開催が今回の一番のポイントだと思います。癌学会学術集会は東京地区、名古屋地区、京阪地区の持ち回りで行うというルールがあり、2年前に私が会長を仰せつかったときには、会場が先に設定されておりました。そして名古屋で癌治療学会総会が行われるということがわかっておりましたものですから、癌治療学会の門田理事長に癌学会と癌治療学会を一緒にしよう。せっかく名古屋でやるのなら、通しできちんとやろうと提案したのです。

 どうしてそう考えたかというと、ちょうど2年前に「がん対策基本法」ができた。がん対策基本法には基本的な施策として3つありますが、一つ目は癌の予防および早期発見の推進、2番目は癌医療の均てん化の促進、そして3番目が研究の推進。こういったことを実際にどういうふうにできるのかということを考えました。癌学会の基礎的な研究を主体にするグループと、癌治療学会の治療を目指すグループが一緒になって、まさに癌医療の均てん化を一つの流れとしてこの1週間で見られるようにしようと。

 そして癌治療学会にお話ししたところ、理事会、学会員の先生方、特に評議員の方々が賛同してくださいましたものですから、この企画になった。

 癌学会は基礎の研究者の会員がだいたい1万5000人いますが、そのうち5000人が名古屋に集まってきます。癌治療学会もおおよそ同じ、1万5000人ぐらいの会員で5000人が集まる。だから約1万人がこの1週間に来てくださる。そして学会は粛々と、あくまでも学会らしくサイエンティフィックにきちんとやっていく。

 癌に関する研究の促進は学会の役割だと思いますが、均てん化ということについては、学者が自分の研究をすればいいだけではない。それを市民がどういうふうに理解し、どういうふうに共有するかということを目的にしたものも作ろうではないかということで、癌治療学会の平川会長も賛同してくださいまして、市民の皆様が参加できる一連のイベントをまとめて「Cancer Week 2008」ということで運営しています。9月の初めから最後のほうは11月までと、非常に長期にわたってたくさんの企画を予定しております。東京、大阪でもイベントを開催します。

 もちろん癌学会、癌治療学会共同でということですが、臨床腫瘍学会を初めとする他の学会にも協力いただけました。行政としては文科省、厚労省、愛知県、名古屋市、新聞社の皆様にもご協力、主催、後援をしていただいておりまして、大変感謝しております。さらに患者会、NPO法人なども加わっていただいて、本当に患者の方々が主体的に参加できるイベントをたくさん企画しました。ただ勉強というだけではなく、チャリティコンサートや、映画の試写会、これは乳がんに若くしてかかった方の映画ですが、こういった試写会を通しながら検診をぜひ受けていただきたいというメッセージも発していけたらと思いました。

 がん医療の均てん化というものを、いろいろな立場の人、私たちのような研究者は研究者の立場から、医療の方は医療の立場から、それから患者さんは患者さんの立場から、パートナーはパートナーの立場から考え、みんながそれぞれのパートを支えて、それをみんなで共有できて、未来に希望を持ちながらがんと対峙する。

――今回の癌学会総会のキャッチフレーズは“未来への架け橋”―Blazing a trail to the future―です。

上田 稲妻のように架け橋を次の未来へ作っていく。これから市民と一緒に作っていくし、基礎も臨床も一緒になって、癌にきちんと立ち向かう。そういう趣旨です。がん対策基本法が本当に有効な法になっていくことに、我々の力を微力ながら果たせればという気持ちを込めました。

 そして名古屋の地、東海地区から、がんの均てん化を文字どおり本当に実践して、一つのモデルを作りたい。「Cancer Week」はまさに実践の場なんです。モデルを作っているんです。それがうまくいけば他府県もどんどんそれを広げていけばいい。都道府県単位でどのぐらいきちんと対応できるかどうかということが一番のポイントであると我々は考えています。

 この考えに皆さんが賛同してくださって、「Cancer Week」が実際には「Cancer Month」になって、3カ月にわたってやらざるを得なくなった。そしてこれは、これで切れるのではなくて、この次の季節、半年後とか1年後にまたやらなければいけない。時限立法ではいけないということです。