転移性大腸癌に新しい分野が開けてきた。その立役者が抗VEGF抗体であるベバシズマブと抗EGFR抗体セツキシマブである。10月24日から開催された第45回日本癌治療学会総会のランチョンセミナーにて「転移性大腸癌治療に新たな選択肢」(共催:メルクセローノ)で講演したドイツKlinikum Oldenburg・Klinik fuer Onkologie und HaematologieのClaus-Henning Koehne氏は、最近の臨床試験データをもとに、転移性大腸癌における分子標的薬のファーストライン治療からサードライン治療における治療成績を示すとともに、分子標的薬の新しい位置づけについて概説した。

転移性大腸癌治療における分子標的薬の位置づけ

 これまでの転移性大腸癌における治療戦略としては、(1)curative(治癒療法)過程では、FOLFIRI/FOLFOX/FOLFOXIRIをファーストラインに、(2)またpalliative(緩和療法)過程では、進展抑制にはFOLFIRI/FOLFOX、(3)window of opportunity(転移例で良好な状態)ではフルオロピリミジンをファーストラインに、セカンドラインとしてFOLFIRI/FOLFOX──が考えられている。では新しい治療薬である分子標的薬の位置づけはどうなるのか?

 まず、ベバシズマブは5-FU/LVとの併用療法により生存期間中央値(MST)を有意に延長。IFLとの併用療法でも奏効率(RR)、無増悪期間(TTP)、全生存率(OS)において有意な改善効果が認められた。

 XELOXとFOLFOX4にそれぞれベバシズマブを併用したNO16966研究では、無増悪生存期間(PFS)について、XELOX群(プラセボ+ベバシズマブ併用)とFOLFOX4群(プラセボ+ベバシズマブ併用)との間に有意差は認められなった。また、サブグループ解析では、XELOX+ベバシズマブ群でPFSにも有意な延長が認められた。有害事象に関しては、ベバシズマブ投与群で65歳以上、ATE(動脈血栓塞栓症)の既往歴のある症例において、ATEの発現が多く見られた。

図1 各レジメンとベバシズマブの併用における治療成績の比較(画像をクリックすると拡大します)

 図1は各レジメンとベバシズマブの併用におけるRR、PFS、OSの評価の概要だが、ベバシズマブに関しては、ファーストライン治療ではイリノテカン(CPT-11)との併用でRR、PFS、OSにおいて改善効果がみられており、最もよい組み合わせといえそうだ。

ファーストライン治療でセツキシマブによる改善効果認める

 セツキシマブに関しては、サードライン、セカンドライン(BOND-1/2試験:イリノテカン抵抗性大腸癌患者を対象に、イリノテカンと抗EGFR抗体セツキシマブを併用。BOND2試験ではこの併用にベバシズマブを加える効果について評価した)において、セツキシマブ単独よりもイリノテカン、ベバシズマブとの併用により、より高い奏効率、PFSが得られている。

図2 日本人を対象としたセツキシマブの治療成績の概要(画像をクリックすると拡大します)

 セツキシマブの奏効率に関して、日本でのデータ(n=39)では、奏効率31%、病勢コントロール率(CR+PR+SD)64%、PFS中央値4.1カ月、OS中央値8.8カ月と、欧米人と差異のない改善効果が認められている(図2)。主な非血液毒性としては、ざ瘡様皮疹、下痢、食欲不振などが74〜97%に見られたが、グレード3以上は10〜18%と少なかった。これは、欧米と同一の用法・用量で実施されたものであり、多くの他の抗癌剤が欧米に比較して少ない投与量としているものとは大きく異なるものである。