そのため冨田氏は、「同じ有転移症例でも、異なるリスクグループ間で同じ治療体系でいいのかと考えている」という。限られたデータをもとに考えていることだと繰り返し強調しながらも、この治療成績の違いは、1)日本では泌尿器科医が診療しているため、臨床的単発転移が見られたら切除する例が多く、切除したほうが予後がよかった、2)例えPDとなってしまっても他に選択肢がないため免疫療法を続けようという治療態度をとる医師が多い。海外の医師はPDになった場合、免疫療法はやめてしまう例が多い、3)日本のほうが転移を早期に発見する──という3点にあるのではないかと考えていることを明らかにした。

 そして、現時点での冨田氏らの治療戦略として、未治療でMSKリスクが良・中程度の患者をさらに分類。「肺転移のみの患者の場合であれば、まずはIL-2をベースとした治療を試みてみる価値があり、その後、スニチニブやソラフェニブによる治療に移行してもいいのではないか」「欧米での分子標的薬の長期投与の結果を待ちたい。この患者群は5年以上の生存が期待できるため、AEによる患者のQOL低下の可能性を避けたいからだ」という考えを披露した。

 一方、進行腎細胞癌の治療において、手術による腎摘出が第一選択肢ではない場合もあるのではないかと考えていると言及。T3bの症例にスニチニブを投与した結果、腫瘍縮退が確認され、ネオアジュバント療法としてスニチニブが利用できる可能性があること、あるいはT1aの症例で急速に症状が進行しない場合であれば、高齢者などでは切除せずに様子を見つつ、増大傾向が見られればスニチニブなどを投与するという治療法の選択肢もあるのではないかと考えられることを紹介した。

 そして最後に、分子標的薬を含めたRCCの治療の現状について、
(1)サイトカイン治療は、奏効率は10〜15%。
(2)IL-2治療は、患者の5%未満だが、長期間のCRが得られる可能性がある。
(3)これまではサイトカイン治療が失敗した後のセカンドライン治療はなかった。
(4)サイトカイン抵抗性RCCに対して、ソラフェニブとスニチニブは有効である。
(5)サイトカイン未治療RCC患者に対しても、スニチニブ療法は有効で、IFN-α療法よりも腫瘍は縮小し、PFSは延長し、OSも延長するだろう。
(6)ベバシズマブとIFN-αの併用は、これから検討が必要だが、スニチニブ単独療法と同等の効果が得られるかも知れない。
(7)スニチニブはベバシズマブが効かなくなったRCCにも効果がある。
(8)スニチニブはソラフェニブ抵抗性RCCに効果があるが、スニチニブ抵抗性RCC対するソラフェニブの効果はあまり高くない可能性がある。
(9)スニチニブ、ソラフェニブ、ベバシズマブは、今のところ、長期間CRが得られる証拠はまだ存在しない。

とまとめ、「有転移症例について、分子標的薬の登場によって、手も足も出せなかったところから状況が変わるかも知れない。ただ、現在、分子標的薬の併用を含め、多くの臨床試験が進んでいる段階で、更なるデータの蓄積や解析、治療戦略への反映が必要だろう」として講演を締めくくった。