図3 RCC治療アルゴリズムの概要(画像をクリックすると拡大します)

 これらの分子標的薬の登場により、現在、RCCの治療アルゴリズムとしてまとめられたのが図3だ。このアルゴリズムは、米Cleaveland ClinicのBukowski氏らが今年2007年のASCOにて発表したものだ。そして、各薬剤の日本国内の開発動向として、ソラフェニブ、スニチニブはフェーズII試験が終了し、現在承認申請中で、2008年上半期には利用できるようになる見込みであること、mTOR阻害薬であるエベロリムス、テムシロリムスは、それぞれグローバルでフェーズIII、フェーズII臨床試験が進んでいることを紹介した。

有害事象は国内外で異なるため注意が必要

 分子標的薬として注目が集まるのがスニチニブやソラフェニブ。しかし、冨田氏は、「両剤とも飲み薬だが、我々はともすれば飲み薬であると(有害事象について)油断してしまうこともある。注射薬と比較してどちらがAEが高いかといったこれまでの固定概念は取り払った方がいい」と引き締めた。

 まず、ソラフェニブで見られるのが、手足皮膚反応。冨田氏によると、時に有痛性で、重篤になると歩けなくなる事例がある。そのため、投与量を減らさざるを得なかった例があったため、皮膚の観察は重要なポイントだ。

 また、ソラフェニブでは、グレード3以上の高血圧が見られる事例がある(JCO 2006:24;1363)。VEGFのシグナル伝達を阻害するため、血管内皮が障害される可能性があることから考えると、高血圧は見られても不思議ではないとしたが、グレード3の高血圧は2剤以上の降圧薬が必要なレベルで、血圧には注意すべきとした。また、時に非常に難治性の下痢が現れることがあり、「お腹の調子はどうか」と聞く必要がある(Eur.J.Cancer 2006:42;548)。

 一方のスニチニブでは、手足皮膚反応のほかに、甲状腺機能低下が見られる事例がある(Ann. Int. Med.,2006:145;660)。そのため、倦怠感がある場合にTSHを測定し、上昇していれば甲状腺に対する治療を開始すべき。また、骨髄抑制も見られ、定期的な血液検査がどうしても必要である。また、ASCO2007において、心機能障害について発表されたという(ASCO 2007 Abstract5110)。虚血性心疾患のエピソードがなかった患者でも心機能障害を起こす可能性がある。そのため、投与前に心電図や心エコーが必要な場合もあるといえる。

 そして冨田氏は、「日本では欧米のAEとは違うAEが出る可能性があるほか、グレードも異なって出現する場合がある。欧米の情報だけでAEに対処していていてはいけない」と指摘。分子標的薬のAEは患者によってかなり異なり、少なくとも最初の1コースは入院が必要なのかもしれないとした。

腎細胞癌有転移症例治療成績の日米差とは?

 次に、冨田氏は、腎細胞癌有転移症例の治療成績に関する日米の差を語った。

 まず紹介したのが2つの試験結果。1つは、463人の患者に対し、IFN-αをファーストライン治療とした、Motzer氏らが発表した米国での有転移症例の試験で、全奏効率が11%で、3年生存率が19%というもの(Motzer, JCO.,2003)。もう1つが、241人の患者を、IFN-α群と腎摘出+IFN-α群に分けて生存率を比較したSWOG8949試験で、転移があっても腎摘出をした方がいいという根拠になった結果(Flanigan et al. NEJM,2001)だが、全生存率を見ると、24カ月で約2割となっており、4、5年ではほとんど生存例がない。この2つの試験結果が米国での有転移症例に対する治療成績の現状だ。

 一方、冨田氏は、国内のいくつかの施設に協力を仰ぎ、有転移症例1400例を集めて生存率を解析した結果、1年生存率が64%、2年生存率35%、5年生存率22%、10年生存率が9.1%となっており、生存期間中央値は642日だった。先のMotzer氏らの中央値は306日であったことを考えれば倍以上だ。

 さらに解析を進めた結果、リスクファクターとして、1)初診から転移出現までの期間が1年以内、2)PS1以上、3)LDH 450U/L以上、4)補正カルシウム10mg/dL以上、5)CRP 0.3mg/dL以上──が見出され、リスクファクターの数をもとにリスクグループを分類。リスクファクターが0か1個はFavorable、2個か3個がIntermediate、4個か5個がpoor riskであるとした。Favorable群は全患者の25.7%で、生存期間中央値が1765日。約6割を占めたIntermediate群は634日、15%はpoor risk群で186日だった。