VGEF経路をターゲットにした新薬の開発

図2 VEGF経路における治療薬開発戦略の概要(画像をクリックすると拡大します)

 悪性乳癌の治療でもう1つ重要なターゲットであるVEGF(血管内皮増殖因子)経路についても新しい新薬の開発が進んでいる。VEGF経路をターゲットとした治療薬では、抗VEGF抗体、抗VEGFR抗体、低分子薬による伝達阻害が主なものとなる(図2)。

 代表的な抗VEGF受容体モノクローナル抗体であるベバシズマブは、パクリタキセルなどの化学療法剤およびホルモン療法剤との併用療法で効果が示されており、現在は新たに他の化学療法剤との併用療法試験が進行中である。その他の注目される新薬として、sunitinib、axitinibが挙げられる。

図3 抗HER2薬と抗VEGF薬の併用効果を調べるE1105試験の概要(画像をクリックすると拡大します)

 このように次々と新たな薬剤の開発が進められている中で注目されているのが、抗HER薬と抗VEGF薬の併用効果を調べるE1105試験だ。HER2陽性症例に対するファーストライン治療としてトラスツズマブ+パクリタキセル+カルボプラチンにベバシズマブを併用するかしないかで2群に分け、その後、維持療法としてトラスツズマブ+プラセボ投与とトラスツズマブ+ベバシズマブの併用投与による治療効果を比較する臨床試験が進行中で(図3)、その結果が今年(2007年)12月にサンアントニオ乳がんシンポジウムで報告される予定である。

 VEGF経路において、もう一つ注目されているものに、マルチターゲットチロシンキナーゼ阻害薬のpazopanibがある。VEGFR、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)およびc-kitと呼ばれる血管新生の過程で必要な蛋白質のリン酸化経路を阻害する作用を有しており、臨床試験では良好な治療成績を示している。pazopanibにおいてもHER経路に阻害作用を有するlapatinibとの併用療法試験が進行中で、その結果が期待されている。

 乳癌における分子標的治療薬の今後の展開としては、化学療法の回避、トラスツズマブ抵抗性の克服、ホルモン剤療法の抵抗性克服などを目的とした分子標的治療薬間での併用の検討。また薬剤抵抗性機序のさらなる解明により、腫瘍生物学に基づいた個別療法の開発が課題となると締めくくった。