治療薬の増加で生存期間も延長

 大腸癌の化学療法は、使用できる治療薬が5-FUのみという時代が長く続いてきたが、2000年前後から、カペシタビン(国内未承認)、CPT-11(イリノテカン)、L-OHP(オキサリプラチン)が登場し、さらに分子標的薬のベバシズマブやセツキシマブ(国内未承認)などが開発され、大きく進歩してきた。瀧内氏は、「化学療法のレジメンが多彩になるにつれて、5-FUのみでは12カ月程度だった生存期間は20カ月以上にまで延長された」と話した。

 2005年に発行された「大腸癌治療ガイドライン」では、国内外のフェーズIII臨床試験により生存期間の延長が検証された化学療法レジメンとして、(1)FOLFOX(5-FU+ホリナートカルシウム+オキサリプラチン)(2)FOLFIRI(5-FU+ホリナートカルシウム+イリノテカン)(3)IFL(5-FU+ホリナートカルシウム+イリノテカン)など5つを挙げ、(1)と(2)を第一選択と定めている。

 瀧内氏は、「期待の分子標的薬が続々と臨床現場に入ってくることを考えると、現在のガイドラインは大幅な書き換えが必要になるだろう」と予測。その上で、現在推奨されている二つのレジメンに関して、オキサリプラチンは末梢神経障害が生じることが知られており、オキサリプラチンを休薬し再導入(stop and go)するなどの投与法の工夫も必要とするOPTIMOX試験のデータを示した。

 2007年4月に承認されたベバシズマブについては、ファーストラインおよびセカンドラインでの使用は幾つかの臨床試験により有効性が証明されているものの、サードラインでの使用における有効性については疑問符が付くと指摘。イリノテカンおよびオキサリプラチン両剤に抵抗性となった転移性結腸・直腸癌患者100人に対して5-FU+ホリナートカルシウム+ベバシズマブによる治療を行って病変の進行具合を検討したところ、奏効率(RR)が約1%にとどまったTRC-0301試験の結果を示した。

皮膚毒性強いほど生存期間も延長

 一方、現在承認申請中のセツキシマブについては「ファーストライン、セカンドラインに加えて、サードラインでの有効性を初めて明確に示した治療薬だ」と強調した。この根拠は、従来の治療法に抵抗性の転移性結腸・直腸癌患者572人をBest Supportive Care(BSC)群とBSC+セツキシマブ群に分けて、病変の進行具合および毒性を比較したNCIC CO.17試験の結果、生存期間中央値がBSC群4.6カ月からBSC+セツキシマブ群6.1カ月へと、有意に延長されたためだ(p=0.0046)。

図2 皮膚反応グレード別の無増悪生存期間(画像をクリックすると拡大します)

 セツキシマブは、顔面や胸部ににきび様皮疹がみられる特有の皮膚毒性が知られている。瀧内氏は、ファーストラインでのセツキシマブの有効性を示したCRYSTAL試験で、皮膚反応がグレード0か1だった244人の無増悪生存期間が5.4カ月だったのに対し、グレード2の243人では9.4カ月、グレード3の112人では11.3カ月と無増悪生存期間が延長したことを紹介し(図2)、「皮膚毒性が強いほど治療効果も高い傾向にあるので、これをどう見極めていくか、注意深い検討が必要だ」とした。

 瀧内氏は最後に、「ベバシズマブはファーストラインでの使用が原則となる。その点、セツキシマブはどのラインでもエビデンスが示されており、有効利用が期待できるのではないか。来年、承認されるのではないかとは聞いているが、臨床現場で一刻も早く使えるようになって欲しい」と述べた。