九州大学泌尿器科学分野教授の内藤誠二氏

 腎細胞癌の治療は手術が中心であるが、手術不能の転移性腎細胞癌に対しては、細胞性免疫活性化に働くインターロイキン-2やインターフェロン-αが20年以上にわたり使われてきた。しかし治療成績は良好とはいえない。分子標的薬によりどれだけの治療効果が望めるのか──。九州大学大学院医学研究院泌尿器科学分野教授の内藤誠二氏は、10月24日から開催された第45回日本癌治療学会総会のランチョンセミナー「The Clinical usage for molecular targeting agent in advanced RCC」(共催:バイエル薬品)で講演し、腎細胞癌の疫学をはじめ、転移性腎細胞癌の従来治療、経口分子標的薬であるソラフェニブの臨床試験の結果、そして分子標的薬の将来展望について語った。

IFN-αから分子標的薬へ

 内藤氏はまず疫学的観点から、わが国の腎細胞癌罹患率は欧米に比べて低いものの、中国やインド、タイなどアジア諸国の中では決して低いとはいえない状況にあることを説明。40年前と比較すると、腎細胞癌による死亡率は3倍にも増え、泌尿器科領域では前立腺癌に次ぐ死亡率であるという。

 進行腎細胞癌に対する治療には、インターロイキン-2(IL-2)やインターフェロン(IFN)-αが長年使われており、わが国における腎がん診療ガイドライン2007年版(http://jsco-cpg.jp/guideline/10.html)でも、IFN-α単独療法は近接効果や無増悪生存期間、全生存期間に関して有効であり、推奨グレードAと評価されている。しかしIFN-αの奏効率は10〜15%、効果持続期間も6〜10カ月、IL-2にしても奏効率は15%程度、腫瘍完全消失は3〜5%と決して満足のいく成績とはいえない現状がある。

 またこれらの治療が無効となった症例では選択肢がない状態が続いていた。そこに登場してきたのが分子標的薬だ。血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)や血小板由来増殖因子受容体 (PDGFR)を阻害するソラフェニブやスニチニブ、あるいはVEGFの働きを阻害するベバシツマブや、mTOR(mammalian Target of Rapamycin )を阻害しHIF(低酸素誘導因子)という蛋白質を低下させるテムシロリムスが、腎細胞癌治療薬として期待されている。

 ソラフェニブは、細胞増殖に関与するRafキナーゼやVEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、PDGFR-Bなどを阻害するマルチキナーゼ阻害剤。大規模なフェーズIII臨床試験TARGET(Treatment Approaches in Renal Cancer Global Evaluation Trial)は2003年11月に開始され、米国では2005年12月に腎細胞癌の新規治療薬として認可された。欧州では昨年認可され、日本では2006年6月、進行腎細胞癌の適用承認申請が行われた。