エキセメスタンには骨保護作用があるか

 アロマターゼ阻害剤を投与されている閉経期乳癌患者の骨折リスクにどう対処するか。その際に注目されるのが、アンドロゲンに近い構造を持ち、アンドロゲン作用を有しているステロイド系のエキセメスタンだ。

 エキセメスタンはタモキシフェンと違って骨粗鬆症を予防できるということはないが、エキセメスタンは他の非ステロイド系のアロマターゼとは異なり骨の増殖マーカーを増やすことや骨芽細胞のマーカーを増やすことが報告されている。また、エキセメスタンかプラセボを2年間投与して骨密度の変化を調べたO27試験では、エキセメスタン投与で大腿骨の骨量は減少したが、椎骨骨量は低下せず、プラセボと比べて骨粗鬆症、骨折の頻度は変わらないことも明らかになっている。

さらに、エキセメスタンを用いたTEAM試験のメタアナリシスのサブグループ解析もおそらく近い将来発表される予定だが、この試験の中途解析では、プラセボと比べて少なくとも骨折の頻度は増加していないという結果も報告されている。TEAM試験では、閉経後初期乳癌患者の術後補助療法として、エキセメスタンを5年間投与する群と、5年間のうち最初の数年はタモキシフェンを投与し、その後エキセメスタンに切り替える群とを比較する無作為化多施設試験である。

 上記の所見は他のアロマターゼ阻害剤には一切認められていないことから、エキセメスタンには臨床的には骨保護作用があるのではないか、そしてこの両者のアロマターゼ素材剤の作用機序を考えるとこの骨保護作用の機序はアンドロゲン作用ではないかという仮説があるのは当然と言えるかも知れない。

アンドロゲンは骨に直接作用するか?

 従来、アンドロゲンはエストロゲンに変換されて骨を保護していると考えられていた。しかしエストロゲンがまったくないアロマターゼ欠損症の患者ではそれほど骨折もしていないし、骨塩量も減っていないという臨床的観察がある。一方、アロマターゼ欠損症の患者には血中に多くのアンドロゲンがある。このことから、このアンドロゲンが直接骨に作用しているのではないかという考え方が生まれてきた。

 現在では、このアンドロゲンの直接作用は、骨芽細胞に対するものが中心であることがわかっている。つまりアンドロゲンもエストロゲンと同様に、骨を作る細胞に作用しているわけだ。

図5 hFOB1.19細胞に各種薬剤を添加した際の細胞増殖の程度(画像をクリックすると拡大します)

 しかしこのような臨床的知見からだけでなくアンドロゲンの骨への直接作用を更に検索するには、実際に骨芽細胞に作用していることを実験的に証明する必要がある。そこで今回この目的で実験に用いたのはステロイドホルモンに反応しヒト骨芽細胞に最も近い動態を示すhFOB1.19細胞である。この細胞は何代継代してもけして腫瘍化はせず、アンドロゲンの受容体もエストロゲンの受容体双方を発現しており、生理的なエストロゲン濃度で増殖が刺激され、男性ホルモンでもこの細胞増殖が認められる。 すなわちこのhFOB1.19細胞を用いた検討はアロマターゼ阻害剤を投与されている患者の骨状態を検討するのに、非常に良いモデルであるということがわかってきた(図5)。