血液中のエストロゲン濃度が低くなると、破骨細胞の活動も活発にはなるがどちらかというと骨芽細胞の数が減ってしまう事で骨量が低下する。しかし、閉経期以降、全ての女性が骨粗鬆症になるわけではない。この原因を解析した結果、ヒト骨組織の中、特に骨芽細胞でもアロマターゼが存在し、このヒト骨組織の中でアロマターゼにより男性ホルモンからエストロゲンを生合成している高齢者では比較的骨密度も十分保たれているということも明らかになってきた。すなわち閉経期以降の乳癌患者のようにアロマターゼ阻害剤を投与すると、血液中ばかりではなく骨中のエストロゲン濃度も低下してしまうことになり骨組織においては極めて骨量を維持するのが難しい状況になる事は想像がつくのではないかと考えられる。

タモキシフェンにはエストロゲン様作用

 一方、エストロゲンを阻害する内分泌療法として、20年以上前からタモキシフェン系の薬剤が投与されてきたが、最近のアロマターゼ阻害剤のように骨量が低下するなどといった問題は一切なかった。

図2 各種物質の骨細胞増殖刺激能の比較(画像をクリックすると拡大します)

 さて同じ内分泌療法でもその作用機序を考えてみると、上述のようにアロマターゼ阻害剤がエストロゲンの合成を抑えるのに対し、タモキシフェンはエストロゲンの受容体への結合を拮抗的に阻害する事でエストロゲン作用を抑制している事が知られている。しかもタモキシフェンは、骨ではエストロゲン受容体を活性化し骨芽細胞の増殖を逆に刺激するというエストロゲン作用を呈している訳である(図2)。このためこのタモキシフェンは、現在は抗エストロゲン剤とは呼ばず、たまたま乳癌組織の多くでエストロゲン受容体に結合して抗エストロゲン作用を出している弱いエストロゲンであるSERM( selective estrogen receptor modulator)と捉えられている。更に最初にタモキシフェンを2年投与し、その後アロマターゼ阻害剤を3年投与するいわゆるスイッチングスタディでも病的骨折や骨密度が低下しないことも明らかになってきており、このタモキシフェンによる骨保護作用はある程度持続性に認められる事も分かって来た。