米南カリフォルニア大学Norris Comprehensive Cancer Center教授のHeinz-Josef Lenz氏

 2007年6月に日本で承認された、血管新生阻害作用を持つ初めての抗癌剤である抗VEGF抗体ベバシズマブ(商品名「アバスチン」)。10月24日から開催された第45回日本癌治療学会総会の初日、イブニングセミナー「Integrating Anti-Angiogenic Agents into mCRC Therapy」(共催:中外製薬)の座長を務めた筑波大学大学医院人間総合科学研究科消化器内科教授の兵頭一之介氏は、「本邦での全例調査も2600例を超える症例が登録され、ベバシズマブの効果を実感できる段階まできた。これからはそのマネージメントについて学んでいく段階だ」とセミナーの口火を切った。

 講演したのは、米南カリフォルニア大学Norris Comprehensive Cancer Center教授のHeinz-Josef Lenz氏。Lenz氏は、まず最初に、転移性大腸癌薬物治療の現状について総括した。最大の奏効を得るためにさまざまなレジメンが検討されてきたが、治療を中断する理由として、癌の進展ではなく毒性の問題が大きく、例えばFOLFOX4をより簡便化したレジメンであるFOLFOX7でも進行性大腸癌の治療効果は同等であることを示したOPTIMOX試験などからも、抗癌剤の使い方の見直しの重要性が指摘されている。

 このような状況において、ベバシズマブは治療にどう貢献するのだろうか。Lenz氏が臨床試験結果を解説する前にまず触れたのがベバシズマブの作用機序だ。

抗VEGF療法は血管網を整え、腫瘍組織に抗癌剤が届きやすくする

 まず、腫瘍組織、及び腫瘍細胞では何が起こっているのかを概観すると、

(1)腫瘍細胞は、生存に必要なさまざまな因子を放出するが、そのうちの1つに血管内皮増殖因子であるVEGFがある。
(2)血管内皮細胞は腫瘍細胞が放出するVEGFを受け取って増殖する。
(3)腫瘍組織の微細血管数が増加する。
(4)血管内皮細胞が増える一方、相対的に周皮細胞(pericyte)が少なくなり、結果的に血管の物質透過性が亢進し、組織間質圧が高まる。
(5)組織間質圧が高まるため、抗癌剤が腫瘍組織に届きにくい。

 一方、VEGFへの結合活性を持つベバシズマブは、

(1)VEGFを抑制することで、腫瘍近辺の異常に増加した未熟な血管を退縮させる。
(2)VEGFを抑制することで、血管内皮細胞の増殖が抑制され、血管の正常化が起こり、組織間質圧が下がる結果、抗癌剤が腫瘍に届きやすくなる。
(3)腫瘍組織の血管新生を阻害する。
(Takahashi. Arch Surg 1997;132:541、Willett. Nat Med 2004;10:145、Wildiers. Br J Cancer 2003;88:1979、)

という機序によって抗腫瘍効果を発揮すると推測されている。