癌研究会癌研有明病院院長の武藤徹一郎氏

 「外科医は何をすべきか。私の外科人生の反省を込めて、皆さんへの期待を示す」。

 10月24日から開催された第45回日本癌治療学会総会の招請講演、「癌治療における外科医の役割」で、癌研究会癌研有明病院院長の武藤徹一郎氏はこう切り出した。

 今年4月に施行された「がん対策基本法」では、癌の予防および早期発見の推進、癌医療の均てん化の促進、癌研究の推進等の3つが基本施策として挙げられている。「がん対策基本法に挙げられている施策が全て行われれば、日本の癌死はあっという間に減ることは間違いない」と武藤氏は話す。

 「しかし、難治癌に対する医療体制ができているかというと、not yetだ」と武藤氏。個々の医師・施設のレベルではなく、チーム・連携ができていないのが問題だという。そして、癌を3種類に分けて現状を説明した。

癌は3つに分けられる

 第1群は施設による治療成績の差がない癌。早期発見により比較的容易に治療できる、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌など。これらの癌については、検診や内視鏡治療が主役であり、今は外科医の手から離れている。

第2群は、医師・病院によって予後が異なる癌。肝臓・胆嚢癌、食道癌、直腸癌など。このグループは、よい腕の外科医がいるかどうかや最新の機器の有無によって治療成績が異なる。外科が重要な役割を果たすわけだが、しかし冷静に考えると、患者はそんなに多いものではないとする。

 そして第3群。誰もどこでも治せない癌。高度進行癌、再発癌、膵癌、一部の肺癌など、いわゆる難治癌と総称されるもの。これががん難民の主体をなしており、日本に33万人存在する。そしてこれら治せない癌には、これまで正対して来なかったと武藤氏は振り返った。

 「これからは、第3群の患者さんを常に診るという姿勢が必要である」と武藤氏は強調する。その時、大きな問題は、化学療法を誰が行うかである。Surgical oncologistかMedical oncologistか――。現状では、外科がやることを余儀なくされている。「しかし、Medical oncologistがやるのが正しいありかたではないか。癌研にきてつくづくそう思った」と武藤氏は話す。トップレベルの化学療法は、もはや外科医が片手間に行える領域を超えているというのだ。

それでは、外科の役割は――。

 「外科が全てをやるという時代ではない。心情はわかるけれども、それではいけない。俺がやるんじゃなくて、病院がやるというスタンスが大事だ」と武藤氏は続ける。主治医制からチーム医療制へ、キャンサーボードのようなチーム医療体制の中で、外科医は他の医療関係者と対等な立場で癌医療に参画することが求められている。

 「これまで外科医は、個人プレーに頼っていた感がある。これからは、やりたいことをやるのではなく、やらねばならぬことをやる覚悟が必要。GoalはMedical oncologistだが、先兵となるのは外科医である」と武藤氏は講演を締めくくった。