S-1は国内の標準レジメン

 今年2007年のASCOでは、日本人を対象としたS-1のフェーズIII臨床試験の結果が2つ発表された。1つは、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が行った試験(JCOG9912)で、静岡県立静岡がんセンターの朴成和氏らが発表したもの。もう1つは、小泉氏自身も研究チームに加わっていたSPIRITS試験だ。S-1単独群とS-1とシスプラチンの併用群を比較したもので、ASCOでは広島大学の楢原啓之氏が報告した。

■5FU対イリノテカン+シスプラチン対S-1
 JCOG9912試験は、5-FUに対して、イリノテカンとシスプラチン併用の優越性、およびS-1の非劣性を評価することが目的とされた。試験の結果、主要エンドポイントである全生存期間は5-FU群が10.8カ月、イリノテカン+シスプラチン群が12.3カ月、S-1群が11.4カ月であり、1年生存率は、それぞれ44.0%、52.5%、47.9%だった。無増悪期間中央値は5-FU群が2.3カ月、イリノテカン+シスプラチン群が3.7カ月であるのに対し、S-1群が4.0カ月と最長だった。S-1群がイリノテカン+シスプラチン群に勝った理由として、小泉氏は、イリノテカン+シスプラチン群では他群に比べ有害事象を原因とした治療中止が多い点を指摘した。結論として、イリノテカンとシスプラチンの併用の優越性は示されなかったが、S-1の非劣性は明らかになったとされた。

 このセッションに対する批評を担当したDana-Farber Cancer InstituteのRobert J. Mayer氏は、JCOG9912試験の結果に関し、S-1群の全生存期間が11.4カ月に及んだ点を評価するとともに、対象アームとなった5-FU単独、イリノテカン+シスプラチン群ともに欧米では使用されておらず、切除不能もしくは進行再発胃癌に対する標準療法としてS-1を加えることは時期尚早とのコメントも添えた。

進行再発胃がんで4人に1人は2年生存

図1 S-1投与群とS-1+CDDP併用群の生存期間の比較(画像をクリックすると拡大します)

■S-1対S-1+シスプラチン
 SPIRITS試験では、JCOG9912試験および小泉氏らが行ったS-1とシスプラチンの併用を検討したフェーズI/II試験の結果を受け、「最強の治療を作ること」(小泉氏)を目指して、S-1単独群とS-1とシスプラチンの併用群を比較した。試験では進行胃癌患者305人(年齢中央値は62歳)を対象に、S-1単独群と、S-1とシスプラチンの併用群に割り付けた。その結果、34.6カ月の追跡期間で、S-1+シスプラチン群では、主要エンドポイントである生存期間(中央値)が13カ月、S-1単独群では11カ月(ハザード比 0.774、p=0.0366)となった(図1、2)。しかも、2年生存率は併用群が23.6%となり、「進行再発胃癌において4人に1人が2年間生きられるようになったというのは驚くべきことだ」と、小泉氏は感慨深げに語った。

図2 SPIRITS試験の結果(画像をクリックすると拡大します)

 全奏効率は併用群で54%、単独群で31%と、有意に併用群で高いことが示された(p=0.0018)。また治療継続期間を比較しても、両群に大きな差は見られず、シスプラチンの追加で治療中止が起こることはないことが示された。忍容性も確認され、「S-1とシスプラチンの併用療法は、進行胃癌において、ファーストラインの標準治療になりえる」と研究グループは結論づけている。