喉頭癌の場合、インダクションの3剤併用療法が奏効した患者では、その後化学放射線治療を行うことにより、喉頭温存療法の可能性が高まり期待が持てる。下咽頭癌では、臓器温存療法による生存率が手術を超えることはないものの、手術とほぼ同等にまで高まる可能性が示唆され、これもQOLの向上につながる。口腔癌や中咽頭癌では、従来のデータに比べてさほど成績の向上が見られず、温存療法を実施するためには、さらに症例と条件の絞り込みを検討する必要がある。

 わが国では、切除不能と判定された頭頸部癌の標準治療は、放射線とシスプラチン+5-FUの化学療法を併用する化学放射線療法だ。切除が可能でも中咽頭・下咽頭・喉頭の温存を目指す場合は、化学放射線療法が実施される。この化学放射線療法でもドセタキセルの併用が有望視されている。

 藤井氏は最後に、頭頸部癌の再発や転移の問題についても紹介した。頭頸部癌の再発・転移例は、1年生存率20〜30%、生存期間の中央値が6〜9カ月で予後が悪い。疼痛や嚥下障害を伴い、整容的な問題もあるためQOLも低い。従来とは異なる強力な治療手段が期待されるところだ。

図7(上) さまざまな腫瘍におけるEGFR発現  図8(下) 頭頸部扁平上皮癌におけるEGFR発現と予後との関連

 この分野では分子標的薬(EGFR-TKI)が有望だ。というのも癌全体の中でも頭頸部癌は、EGFRの発現頻度が著しく高いためだ(図7)。しかも、EGFRやTGFαが高度に発現するほど術後生存率が下がるというデータが得られている(図8)。従って、理論的にはEGFRのモノクローナル抗体であるセツキシマブを使えば、治療成績の向上が期待できるわけだ。欧米では既に臨床試験が実施され、2007年のASCOでも、生存率の向上、生存期間の中央値延長といった報告が出始めている。

 このように、最近では頭頸部癌も集学的治療による治療成績の向上が期待されるようになった。それだけに、わが国でも信頼できるエビデンスを提供できるよう、診療科の壁を越えて多施設共同研究の環境を整えることが急務だと藤井氏は締めくくった。