大腸癌の術後補助化学療法において、フルオロウラシル/アイソボリン5-FU/I-LV)をカペシタビン(商品名「ゼローダ」)に変更した場合、日本では経済的なメリットも得られるという試算結果が明らかになった。10月24日から26日に京都市で開催された日本癌治療学会で、東大大学院薬学系研究科医療政策学の白岩健氏らのグループが発表した。

 カペシタビンは経口投与であるため、患者の利便性向上という観点から、現在5-FU持続投与からの置換の妥当性が検討されている。白岩氏らはまず、英国で行われたX-ACT trial(NEJM 2005J;352(26):2696-704)でKM曲線(Disease free survival)が1年時点でほぼ重なっていることから、効果は同等と考えられるとした。そしてフェーズII臨床試験のデータなどを用いて、1年間にかかる両者の費用を比較した。

 カペシタビンは1250mg/m2体表面積を1日2回、14日間投与を3週間毎に8サイクル、5-FU/I-LVはRoswell Parkレジメンを3サイクルと仮定した。費用は交通費・労働損失(患者アンケートより推定)、副作用対策、調剤、画像診断、外来化学療法、薬剤費の各項目ごとに計算した。

 その結果、投与開始後1年間で、直接医療費はカペシタビン群で66万円、5-FU/I-LV群で110万円と、44万円カペシタビン群が少なかった。総医療費では、カペシタビン群76万円、5-FU/I-LV群128万円と、差は52万円になった。

 さらに白岩氏らは、転移・再発が起こった際にかかる費用も含めた、長期的な分析を行った。転移・再発は5年間のみ起こると仮定、推定にはMarkov modelを用い、分析期間は5年から15年とした。転移後の化学療法はファーストラインがFOLFOX6、セカンドラインはFOLFIRIとし、手術や終末期の費用は含めなかった。予後はGERCOR trial(J Clin Oncol 2004;22:229-237)に基づいた。

 この長期的な分析では費用の差は拡大し、15年の分析では直接医療費のみで60〜70万円、総費用では65〜80万円、カペシタビン群の方が少ないという結果になった。

 白岩氏は、「カペシタビンは比較的安価な薬剤なのでハッピーな結果になった。だが、以前ベバシズマブで同様の試算を行った時は、厳しい結果だった。新薬の登場による医療費の増大はどの国でも問題になっており、それぞれの薬剤についての検討が必要だろう」と話している。