癌の治療に関わる医師であれば、誰もが「難治癌」「再発」といった患者にとって悪い知らせをいかに伝えるべきか悩んだ経験があるだろう。このほど、一般日本人がどのような形で悪い知らせを伝えられたいと思っているかが明らかになった。

 これは、国立がんセンター東病院の藤森麻衣子氏らの研究によるもので、成果は10月25日に日本癌治療学会で発表された。今回の結果は、悪い知らせをうまく伝えるためのコミュニケーションスキルを向上させるために参考になりそうだ。

 同調査によると、日本人患者は、悪い知らせを受けるときに、1)家族を含めた情緒的サポート、2)医学的情報、3)明確な説明、4)質問の奨励、5)場の設定──の5つの項目を考慮して欲しいと思っていることが明らかになった。米国人患者を対象とした同様の調査では、考慮して欲しい主な項目は、1)情緒的サポート、2)内容と伝え方、3)場の設定の3項目──であったことに比較すると、日本人を対象に悪い知らせを行う場合、考慮すべき項目が多いといえる。

 藤森氏は、「日本人患者は、治療法の選択肢のみでなく、医師が推奨する治療法まで示して欲しいと考えている。また、治療法の選択は患者のみでなく、医師や自分の家族と共同で行いたいと考えている」と分析している。

 また同調査では、どの患者も医師に望むこととして「患者の質問に答える」、「わかりやすく伝える」、「今後の治療方針も伝える」、「主治医として責任を持つことを伝える」などがある一方で、望む患者と望まない患者に意見が分かれる項目があることも明らかになった。この意見が分かれる項目の主なものは、「余命について知らせる」「悪い知らせを淡々と知らせる」「悪い知らせを少しずつ段階的に知らせる」「伝える内容が不確実な段階でも知らせる」「断定的な口調で伝える」など。

 すなわち、これらの項目では、個々の患者の個性を配慮した上で、適切な方法を考える必要がある。藤森氏は、「例えば余命については、医師から直接余命を知りたいか?と問われた場合は多くの患者さんはハイと答えるだろう。しかし、このなかには本当は知りたくない患者さんもいる。なぜ知りたいのか、知ることで何をしようと思っているのかなど、患者さんだけでなく、患者の家族や看護士などからの情報などを活用して、伝え方や伝える情報を考えて欲しい」と語っていた。

 患者とのコミュニケーションスキルを向上させるための研修会として、今年10月より医療研修推進財団(http://www.pmet.or.jp/)は、厚生労働省委託事業として「がん医療に携わる医師に対するコミュニケーション技術研修会」を全国で開催している。

 同研修会では、ロールプレイを中心に、患者の意向を理解しながら悪い知らせをうまく伝える方法も学ぶことができるため、興味のある医師はぜひ研修会を受けて欲しいと藤森氏は語っていた。