全国多施設に対するアンケート調査から、肛門癌の初期治療として化学放射線治療を行った場合、5年全生存率は78%と良好であることが明らかになった。調査は、都立駒込病院放射線診療科治療部部長の唐澤克之氏がとりまとめ、10月25日に日本癌治療学会で発表された。

 唐澤氏は、「肛門癌の8割は肛門内にとどまる。初期治療として手術を選択した場合、人工肛門となるため患者のQOL低下は否めない。最初は化学放射線治療を行い、フォローアップするなかで再発が見られた段階で手術を受けるという治療選択も考慮してよいと思う」と語っていた。

 今回の調査は、全国32施設に対してアンケート調査として行われた。集計された患者数は64人で、年齢は32〜90歳(平均65.6歳)、病期分類では、I期が4人、II期が34人、IIIA期が9人、IIIB期が17人であった。組織学的には扁平上皮癌が54人、腺癌が5人、その他が5人であった。

 治療としては、照射線量は40〜76Gy(中央値59.4Gy)、47例に同時化学療法が、5例に小線源治療が併用されていた。同時化学療法としては世界的な標準であるマイトマイシンC(day1〜4で10mg/m2を4週間)と5-FU(day1〜4で800mg/m2を4週間)の併用療法が2サイクル行われている。経過観察期間(中央値)は31.4カ月(8.6〜108カ月)であった。

 治療後、44人が完全寛解、19人が部分寛解した。5年全生存率は78%であり、5年肛門温存生存率は70%となっていた。局所再発は12人、リンパ節再発が7人、遠隔再発が5人存在したという。局所癌組織の未消失もしくは再発のため、化学放射線治療を受けた後に、人工肛門の造設を受けた患者は12人であった。

 グレード3以上の有害事象は、皮膚粘膜炎が20人、下痢が3人、白血球減少が6人、食思不振が3人、ろう穴形成が1人みられた。

 今回の後ろ向きのスタディーで良好な成績が得られたことから、唐澤氏らは今後、前向きの研究を計画中だ。具体的には、JCOGと日本放射線腫瘍研究グループが前向きスタディーを計画準備中だという。