──専門性の高い医師の育成に関しては、専門医制度を充実させようとしています。しかし、さまざまな専門医制度や認定医制度があって患者にとって分かりにくいという声もありますが・・・

平岡 「日本がん治療認定医機構」が、「がん治療認定医」の認定を2008年3月に開始します。この機構は日本癌治療学会と、化学療法領域の日本臨床腫瘍学会などが共同で設立したものです。がん治療認定医が満たすべき条件としては、「がん治療の初期診断から終末期医療までにおける標準的な医療内容に関して理解し説明できる」「外科治療、化学療法、放射線療法などに関して、その標準的治療に対し、指導医や専門医との連携のもとに適正医療の継続に協力できる知識や医療経験を有する」などを設定しています。要するに、標準的な癌治療を理解し、自分で実施したり、他の医師と連携してできる医師のことです。なお、日本臨床腫瘍学会が作る「がん薬物療法専門医」は、抗がん剤治療に関する高度な専門性をもった専門医という位置づけとなります。

今回の総会では、この専門医制度に関するパネルディスカッションも用意しています。2日目の「癌専門医制度の確立に向けて」です。抗癌剤の専門家である内科医の癌薬物療法専門医が大幅に不足している現状では、外科の癌治療認定医も抗癌剤治療を支えていくことが必要でしょう。臨床腫瘍学会と共催する合同シンポジウム「がん化学療法のあり方」で、この辺りの役割分担と位置づけが明確になることを期待しています。

 医師以外の専門職のあり方に関しても「癌医療専門職の育成」というパネルディスカッションを設定しました。癌看護専門看護師、癌専門薬剤師、放射線治療の医学物理士などに関して議論する予定です。チーム医療が質の高い総合的な癌診療を実現します。そのためにはこうした職種の不足も早期に解消しなければならないでしょうね。

──患者にとって自分にベストな治療が何かを知ることは、まだなかなか難しいのが現状です。

平岡 現在、各臓器別、領域別のガイドラインが整備されているところです。「各科領域における診療ガイドラインの検証」というワークショップを初日に行います。また、医療技術の進歩によって、医師の間でもどの治療がいいか議論が分かれている点もありますが、それをはっきりさせるためのディベートセッションも用意しました。治療選択に関して論争になっている癌の種類・病期に関して、異なった主張の論者に意見を戦わせてもらう趣向だ。選ばれたテーマは、食道癌と早期前立腺癌に関して、手術と放射線治療など他の治療法のどちらがいいのかというものです。また、前立腺癌、大腸癌、胃癌について、鏡視下(腹腔鏡)手術と従来の開腹手術のどちらを選ぶべきかというテーマもあります。議論の前後に、会場フロアからどちらを支持するか投票してもらうことも考えています。こうしたディベート形式は論点をはっきりさせるし、教育的意味合いも大きいと思っています。

──総会会長としての抱負をお願いします。

平岡 不思議なめぐり合わせだと感じていますが、私は歴代の癌治療学会総会会長の中で初めての放射線治療分野の専門家です。放射線治療分野は各臓器の診療科を横断的に見ていますし、緩和も含めて癌の臨床の幅広い分野に関わっている。放射線療法と化学療法の推進や緩和ケアの幅広い実施が打ち出されている今、この目標に向かってビジョンを明確にして進むことに貢献したいと思っています。学会としては、がん対策基本法が問いかける課題に真正面から取り組まなければならないと意を新たにしているところです。