PS不良で抗癌剤適応のない非小細胞肺癌で、上皮成長因子受容体EGFR)遺伝子変異陽性症例に対する一次治療としてのゲフィチニブ投与でPSが改善できることが明らかとなった。この結果は、6月15日から開催されている第48回日本呼吸器学会学術講演会で、北東日本ゲフィチニブ研究グループに参加するNTT東日本関東病院医長の臼井一裕氏が発表した。

 ゲフィチニブの添付文書では“化学療法未治療例における有効性・安全性は確立されていない”として2次治療以降での投与が推奨されている。日本肺癌学会の「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」でも“PS2以上の全身状態不良例はゲフィチニブから得られる利益がゲフィチニブ投与による危険性を上回ると判断される場合に限定する”としており、PS(Performance Status)不良のためなど、抗癌剤適応とならない患者には投薬できない。

 ただし、ゲフィチニブは分子標的薬であり、殺細胞活性を持つ抗癌剤と比較して副作用が軽微であると期待されること、EGFR遺伝子変異陽性例では間質性肺炎のリスクが少ないこと、細胞診検体でEGFR遺伝子変異をスクリーニングすることが可能、などの理由から、同グループは、PS不良で抗癌剤投与の適応がない非小細胞肺癌症例でも、EGFR遺伝子変異を確認してゲフィチニブ投与が可能であると考え、初回ゲフィチニブ投与療法の第II相試験を実施した。

 選択基準は、(1)非小細胞肺癌症例で、(2)EGFR遺伝子変異を有し(エキソン19欠失、L858R、L861Q、G719A、G719S)、T790M変異を持たない、(3)根治的放射線治療や手術の適応がない、(4)抗癌剤治療歴がない、(5)20〜75歳未満でPS3以上か75歳以上でPS2以上か80歳以上でPS1以上により抗癌剤治療の適応にならない、(6)白血球数3000/mm3未満または15000/mm3以上、血小板10万/mm3未満などで抗癌剤治療の適応にならない、(7)肝腎機能が保たれている症例、(8)緩和医療での予測予後が4カ月以下と推察される症例だ。

 ゲフィチニブは1日当たり250mgを連日投与し、EGFR遺伝子の変異は、北東日本ゲフィチニブ研究グループに参加する埼玉医科大の萩原弘一氏らが開発したPNA-LNA PCR Clamp法を用いた。この方法は、100個の細胞中1個の悪性細胞があれば遺伝子変異を検出可能で、喀痰や胸水などからでも変異診断ができる方法だ。

 29例が投薬され、男性6名、女性23名。年齢の中央値は72歳(50-84)、ステージIVが27例で、PSは1が3例、2が4例、3が17例、4が5例。喫煙歴は0パック年が22例、1〜19パック年が2例、20パック年以上が5例だった。腺癌が27例、扁平上皮癌が1例、低分化癌1例だった。変異の種類は欠失が18例、L858Rが10例、L861Qが1例。

 治療成績は、CRが1例(奏効率3%)、PRが18例(62%)、SDが7例(24%)、PDが2例(7%)、評価できなかった例が1例だった。全奏功率は66%(90%CI 51-80)、病勢コントロール率は90%(90%CI 80-99)。無増悪生存期間中央値は6.5カ月、生存期間中央値は17.8カ月、1年生存率は63%だった。EGFR遺伝子変異陰性例32例では生存期間中央値は3.5カ月で、14.3カ月延長したことになる。

 PS改善は29例中23例で、PS改善率は79%(95%CI 67-92)。PS3-4からPS0-1に改善した、臨床的に意味のある改善は68%だった。

 臼井氏は、「今後は、PS不良症例に対するエルロチニブの効果の評価や遺伝子変異があってゲフィチニブ投与を受けたがSDだった症例へのエルロチニブの効果に関する評価なども行っていきたい」と語った。