肺腺癌の中には、同時多発するものがある。これらは女性や非喫煙者に多く、進行がゆっくりといった特徴が指摘されている。こうした同時多発肺腺癌の切除標本を検討したところ、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異が高率にみられ、発生にEGFR遺伝子変異が関与している可能性があることが示された。第49回日本肺癌学会総会で、済生会福岡総合病院外科の山崎宏司氏が報告した。

 2001〜2006年の5年間に肺腺癌との診断で外科切除を行った310人のうち、同時多発肺腺癌27人(男性14人、女性13人、平均年齢67.6歳)を対象とした。喫煙歴を調べたところ、喫煙者は9人、非喫煙者18人だった。13人は検診によって発見された。観察期間中央値15.9カ月で、3年生存率は100%だった。

 また、27人のうち、解析可能だった18人(男性7人、女性11人)47病変(腺癌28病変、細気管支肺胞上皮癌14病変、異型腺腫様過形成5病変)の切除標本からDNAを抽出し、EGFR遺伝子変異を解析した。その結果、72.2%で変異がみられた。同時に、kーras遺伝子変異も調べてみたところ、変異があったのは2人のみで、EGFR変異との重複はなかった。

 EGFR変異の有無により病変の悪性度を比較したところ、EGFR変異のある22病変は、悪性度の高い腺癌が17病変で、異型腺腫様過形成はなかった。逆にEGFR変異のなかった25病変は、腺癌11病変、細気管支肺胞上皮癌9病変、異型腺腫様過形成5病変と、悪性度の低い癌の割合が高かった。

 山崎氏は、「一部にkーras変異がみられ、またEGFR変異についても同一症例で異なる遺伝子変異があったケースもあるなど、解明すべき課題も多い。だが、同時多発肺腺癌の発生や悪性へと進行していく過程にEGFR変異が大きな役割を果たしている可能性がある」と述べ、さらなる研究の必要性を強調した。