●血行性転移のマーカーにVEGF-A、リンパ行性はVEGF-C、p53、TGF-β1、腹膜播種はTGF-β1

 九州大学消化器・総合外科学の大垣吉平氏は、再発に関する分子生物学的因子の同定を試み、術後フォローアップについて検討した結果を発表した。対象は胃癌治癒切除例939例。再発の高リスク群の同定を目指し、原発巣の分子診断として臨床病理学的因子と分子生物学的因子の関係について解析した。

 血管内皮細胞増殖因子であるVEGF-Aと浸潤・転移との関係を解析した結果、VEGF-A陰性159例、VEGF-A陽性127例において、漿膜転移例は、VEGF-A陰性が49例(30.8%)、VEGF-A陽性が67例(52.7%)。リンパ節転移例ではVEGF-A陰性が64例(40.4%)、VEGF-A陰性が69例(54.3%)、肝転移例ではVEGF-A陰性が6例(3.8%)、VEGF-A陽性が16例(12.5%)、腹膜播種例ではVEGF-A陰性が6例(3.8%)、VEGF-A陽性が13%(10.2%)だった。VEGF-A陽性群では、血行性転移が最も多かった。

 VEGF-Cの発現をリンパ管侵襲、リンパ節転移別に解析した結果、リンパ管侵襲では、ly0でVEGF-C陽性は28%だったが、ly1では50%、ly2では56%、ly3では67%で、ly1〜3全体ではVEGF-C陽性率は62%とリンパ管侵襲がない症例に比べ有意に高かった。リンパ節転移でも、n0でVEGF-C陽性は30%だったが、n1で50%、n2で68%、n3で66%、n1〜3全体では59%とリンパ節転移のない症例に比べ有意に高かった。

 TGF-β1の発現と浸潤・転移の関係について解析した結果、漿膜浸潤があった症例ではTGF-β1陰性が18.0%であったのに対し、TGF-β1陽性は36.4%だった。リンパ節転移があった症例ではTGF-β1陽性例は62.8%で、陰性例43.7%と比較して有意に高かった。p53異常たんぱく質については、リンパ管侵襲、リンパ節転移があった症例で、p53異常たんぱく質陽性例が有意に相関していた。

 血清中CEA値については、同時性肝転移との関係について解析し、同時性肝転移陰性206例がCEA陽性率(5.0ng/mL以上)が8.3%であったのに対し、同時性肝転移陽性15例ではCEA陽性率は60%と有意に高かった。CEA値の倍加時間とCEA上昇後の生存期間でも正の相関関係が得られた。

 つまり、血行性再発ではVEGF-Aが、リンパ行性再発ではVEGF-C、p53異常たんぱく質、TGF-β1が、腹膜播種ではTGF-β1が関連していた。CEAは倍加速度と生存期間に相関関係があった。

●術前のリンパ球数と総コレステロール値は予後と相関

 金沢医科大学消化器外科治療学の小坂健夫氏らは、術前に得られるさまざまな指数の、再発リスク因子としての重要性を検討するため、94年から03年までに治癒切除術が施行された209例を対象に、腫瘍マーカーのほか、栄養指数として術前のリンパ球数、アルブミン値、総コレステロール値、BMIを対象に解析した結果を発表した。

 男性133例、女性76例で、59歳以下が56例、60〜69歳が80例、70歳以上が73例だった。深達度はT1が81例、T2が80例、T3が36例、T4は12例。リンパ節転移については、N0が108例、N1が53例、N2が30例、N3は18例。ステージIaが73例、Ibが38例、IIが34例、IIIaが22例、IIIbが17例、IVが25例だった。

 再発死は、肝転移が16例、腹膜播種が13例、リンパ節転移が6例、局所再発が6例、遠隔転移が4例、残胃癌が1例で、他病死が15例だった。

 多変量解析を行った結果、リンパ節転移がオッズ比1.598(95%CI 1.138-2.244 p=0.007)、リンパ球数がオッズ比0.509(95%CI 0.293-0.886 p=0.017)、総コレステロール値がオッズ比0.467(95%CI 0.239-0.914 p=0.026)と有意な予後因子と推定された。

 リンパ球数と予後の関係では1000/μL未満、総コレステロール値と予後の関係では130mg/dL未満が不良で、また総コレステロール値220mg/dL以上は予後が非常によいことが明らかになった。総コレステロール値と深達度、リンパ節転移との間で有意な逆相関を示した。リンパ球数では、深達度、リンパ節転移と有意な相関は見られなかった。

 術前の総コレステロール値と予後の関係について小坂氏は、深達度やリンパ節転移と逆相関があることから独立した予後因子の可能性が高いこと、220mg/dL以上は心血管イベントのリスク因子だが、胃癌においてはほぼ全例が生存していることを指摘した。

 小坂氏は、(1)免疫治療薬の投与や投与によるリンパ級数の増加が予後改善につながるか、(2)栄養障害を伴う進行胃癌に対し、静脈栄養法や経腸栄養法などの栄養治療でリンパ球数や総コレステロール値が改善するか、(3)栄養剤の投与、栄養治療により総コレステロール値が上昇することで予後改善につながるか、といったエビデンスの蓄積が必要と締めくくった。