近年、胃癌の治療成績は向上しており、再発後の化学療法の進歩によって長期生存が得られる例も増えてきた。しかし、再発死亡は未だ多く、術後のサーベイランス法も確立されていない。

 2月27日から開催された第80回日本胃癌学会総会の一般演題「再発」(座長・大阪市立大学腫瘍外科学教授平川弘聖氏)では、再発までの期間、部位、サーベイランスの時期と方法、再発の検査に有効な分子マーカーなどについて議論された。ここではまずその概要と、座長の総評、さらに各演題の詳細についてレポートする。

術後5年以上でも再発は5%、残胃癌・重複癌で大腸癌に注意

 まず再発期間について。再発までの期間の中央値や平均値は各施設とも1年を超えている。一方、1年目の再発症例数が約4割という結果や5年以上経過してからの再発が5%という結果も発表された。再発部位については、最も多いのは腹膜播種で、再発例の25.6%〜43.6%だった。再発様式は播種性が最も多く、血行性転移が続いた。再発時期は根治度Aや早期癌でも再発例が見られた。

 サーベイランスは、再発の早期発見だけでなく、異時性の残胃癌や重複癌の早期発見という意味でも必須だ。東京女子医科大学の瀬下明良氏は、早期胃癌例での残胃癌や重複癌に大腸癌が多いと発表した。これに対して座長の大阪市立大学教授平川弘聖氏は、「早期例に限らず胃癌と大腸癌の重複は他の癌に比べて最も多いことを改めて認識し、大腸癌が初発の場合も含め、常に念頭において経過観察することが重要だ」と語った。

 サーベイランスの時期と方法については、各演者ともさらに検討が必要と指摘した。現状は、早期癌では6〜12カ月ごとの外来受診でエコー、CT、内視鏡などを実施し、進行癌では術後1〜3年は3カ月ごと、3年以降は6カ月ごとの診察・検査という形が平均的な姿だ。平均フォローアップ期間は60.4カ月という結果も発表された。

 福岡大学筑紫病院外科の三上公治氏は、再発後短期死亡に関する因子の解析から、血行性転移、局所リンパ節、残胃再発の場合、無症状の段階での早期発見にサーベイランスが有効である可能性を指摘した。

 再発に関する分子マーカーに関しては、九州大学消化器・総合外科学の大垣吉平氏が、血行性ではVEGF-A、リンパ行性ではVEGF-C、p53、TGF-β1、腹膜播種ではTGF-β1とそれぞれ相関が見られたと発表したほか、金沢医科大学消化器外科治療学の小坂健夫氏は、再発リスクと相関が見られた術前の指標として、リンパ球数と総コレステロール値が考えられると発表した。

多くは術後3年以内の再発で、リスクが高い症例では注意深いサーベイランスが必要

 座長を務めた大阪市立大学の平川弘聖氏はこう講評する。


 このセッションの内容は胃癌術後の再発とサーベイランスについて6名の演者の先生方よりそれぞれの施設での多数の臨床例を検討されたものである。検討項目は、対象症例の背景、再発形式と再発時期、サーベイランスの方法と間隔および特殊なマーカーと再発や再発形式との関係などだ。

 対象はほとんどの施設が胃癌で根治度A、Bの治癒切除後の患者で、術後再発が見られた症例について種々検討されている。根治度Bのみならず、根治度Aや早期癌の中でも再発例がみられることは、胃癌のサーベイランスの重要性を示唆している。

 再発形式は胃癌の組織型などによるが、腹膜播種、リンパ節転移、肝転移やそれらの複合型などで占められているのはどの施設にも共通したものである。再発時期については、再発形式との関連が認められるが、腹膜播種、肝転移およびリンパ節転移は術後1〜2年までが多く、頻度は少ないものの骨髄転移は術後数年経って発症することが多いことを、東京女子医大の瀬下先生、仙台医療センターの手島先生、福岡大学の三上先生や北里大学の二渡先生らが認めている。

 全体の発表から、多くは術後3年以内の再発であり、この間のリスクの高い症例の注意深いサーベイランスが必要であると思われる。受診の間隔は3〜6カ月で、検査方はCT、US、血液検査、内視鏡であるが、その間隔や検査法は患者さんの再発リスクを考慮し施設によって工夫されているようである。

 胃癌術後のサーベイランスで再発の早期発見以外で重要なことに、異時性の残胃癌や重複癌、特に大腸癌の発生に注意する必要がある。瀬下先生は早期胃癌での大腸癌発生頻度が高いことを指摘されており、早期例に限らず胃癌と大腸癌の重複は他の癌に比べてもっとも多いことを改めて認識し、常に念頭において経過観察する(大腸癌が初発の場合も含め)ことが重要である。

 今回の発表の中で、九州大学の大垣先生が、VEGF-A、VEGF-C、p53やTGF-βの発現と再発形式との関連性を分子生物学的に明らかにされ、今後再発予測に役立つことが期待される。また金沢医大の小坂先生は血中リンパ数とコレステロール値が再発と関連する興味深い報告をされ、今後その因果関係の解明が課題と思われる。

 今回の先生方の内容は、再発時期、形式やサーベイランス法など概ね一致しているようであり、全国的にも同様の状況と思われる。近年再発胃癌に対して有効な化学療法が出現してきたのを受け、再発の早期発見と早期の治療が今後益々重要になってくるだろう。


  一般演題「再発」で発表された6題の詳細を次頁以降でまとめた。