粘膜下層に浸潤した胃癌は本来、外科手術を行うべきだが、年齢や他の合併疾患などにより、手術が行えない患者も一部にいる。こうした患者に対し、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)光線力学療法(PDT)を併用したところ、局所制御が可能で有用だったと、静岡県立静岡がんセンター内視鏡科の滝沢耕平氏が、第80回日本胃癌学会総会と同時に行われた第4回ESD研究会で発表した。

 対象は、2002年9月から2007年12月の間に、リンパ節および遠隔転移が無い胃癌によりESDとPDTを施行した9人。PDTとは、腫瘍細胞に選択的に蓄積する光感受性物質のフォトフィリンを静注した後、内視鏡を用いて腫瘍細胞にレーザー光を照射、光化学反応でそこに活性酸素を発生させることで、腫瘍細胞のみを効率的に壊死させるという方法だ。滝沢氏は、「ESDの実施から数日たつと病変部がわかりにくくなることがあるので、ESDに引き続きPDTを実施した」と説明した。

 ESDによる切除切片はいずれも5cmを超えており、最大のものは10cmだった。観察期間中央値13.8カ月(7.7〜41.3カ月)で、局所再発0人、遠隔転移0人だった。偶発症としては、ESD後出血が3人、穿孔が2人、PDTによるグレード1の光毒性皮膚炎が1人にみられたが、いずれも軽度で、重篤なものは認められなかった。

 滝沢氏は、「ESDのみ、PDTのみでは局所制御が不十分と報告されている。併用は、さまざまな理由で手術が行えない胃癌患者の一部に有用な方法と考えられた」と締めくくった。ただし、この方法には術中に予想外の出血が生じて内視鏡的な止血が困難だった場合、緊急手術できるのかという難しい問題がある。滝沢氏は、「事前に患者にリスクをしっかり説明し、治療法を選択してもらっている」と話した。