第80回日本胃癌学会総会と同時に行われた第4回ESD研究会で、国立がんセンター中央病院内視鏡部の後藤田卓志氏は、早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術ESD)の長期予後のデータを発表した。ESDは、2000年前後から器具の開発・改良が進み、2006年に早期胃癌を対象に保険収載となった。この治療法の開発初期からかかわり、積極的な技術の普及に取り組んできた国立がんセンター中央病院の、約2000例に上る信頼性の高いデータが初めて明らかにされた。

 対象は、1999年1月から2005年12月に早期胃癌に対してESDを施行した患者1996人(2382病変)。切除標本を検討し、治癒切除1534人(1837病変)、標本により粘膜下層への浸潤が明らかになったなどの非治癒切除462人(545病変)に分けた。

 さらに、現在の日本胃癌学会による「胃癌治療ガイドライン」での内視鏡的治療の適応病変である、2cm以下の潰瘍を伴わない分化型粘膜癌635人、ESDへの適応拡大を目指す病変――具体的には(1)大きさを問わず潰瘍を伴わない分化型粘膜癌(2)大きさ3cm以下の潰瘍を伴う分化型粘膜癌(3)大きさ3cm以下の粘膜下層軽度浸潤癌――である672人、ガイドライン病変の重複癌227人、非完全切除後、外科手術を実施した244人、実施しなかった218人に分けた。

 術後の経過観察により予後の把握が可能だった患者もいたが、そうでない場合には患者に連絡するなどして、全員の予後を調査した。その結果、ガイドライン病変患者の5年生存率が92%(平均観察期間43.3カ月)だったのに対し、適応拡大病変の患者の5年生存率は93%(平均観察期間40.0カ月)と、遜色ない成績が得られた。

 また、非治癒切除となった患者のうち、手術を行った患者の5年生存率が93%(平均観察期間45.3カ月)だったのに対し、手術を受けなかった患者の5年生存率は77%(平均観察期間47.4カ月)と、差がみられた。この両群を年齢別に検討したところ、60〜70歳、70〜80歳と年齢が上がるにつれて、両群のハザード比の差が小さくなる傾向にあり、80歳以上では、両群のハザード比は手術群0.98、非手術群1.87にまで近づいた。

 後藤田氏は、「手術よりも患者にかかる負担が小さいことなどから、内視鏡的治療を受ける高齢者は、年々増加している印象を持つ。こうした患者に対し、あくまでも治癒切除を目指すべきかどうか、どこまで治療をしていくかが今後の課題の一つだろう」と述べた。