幽門狭窄により経口摂取が難しい状態にある切除不能胃癌患者の治療は、抗癌剤の静脈内投与が主となり、症状改善に困難を伴うことが多い。こうした患者に対し、胃空腸吻合術を行い、さらにS-1(「TS-1」)を服用してもらったところ、他の化学療法を行った患者に比べ、生存期間の延長および在宅療養期間の延長が得られたと、大阪府立急性期・総合医療センター外科の西川和宏氏が、第80回日本胃癌学会総会のポスターセッションで発表した。

 対象は、胃空腸吻合術を行った進行胃癌患者37人。1999年12月まで、TS-1以外の化学療法を行った9人(非S-1群)と、2000年1月以降、S-1を服用した15人に分けて、生存期間などを比較した。9人に行われた化学療法としては、UFT3人、5-FU+シスプラチン3人など、5-FU系の薬剤が中心だった。

 患者背景を比較したところ、どちらも重篤なステージIVの患者がほぼすべてを占めていたが、S-1群は平均年齢72歳で男性8人、女性7人であったのに対し、非TS-1群は平均年齢63歳で男性8人、女性1人だった。

 成績は、S-1群の1年生存率が63%、50%生存期間が394日だったのに対し、非S-1群は1年生存率が18%、50%生存期間が168日にとどまり、S-1群で有意な生存期間の延長が得られた(p<0.01)。さらに、両群の在宅療養期間を比較したところ、S-1群は平均282日間だったのに対し、非S-1群では平均117日間と有意な差があった(p<0.05)。一方、S-1群のグレード3以上の有害事象については、食欲不振を1人に認めたのみだった。

 西川氏は、「完全な病変の切除ができなくても、積極的な胃空腸吻合術で経口摂取を可能にし、S-1を服用してもらうことで、以前の化学療法に比べて明らかに入院期間が短縮できた。在宅療養が可能となる患者も増え、QOLの向上が得られた」と話した。