函館五稜郭病院診療部長兼外科部長の高金明典氏

 函館五稜郭病院診療部長兼外科科長である高金明典氏は、ステージII〜IIIBの胃癌の根治切除を受け、S-1の術後補助化学療法を受ける患者を対象とした地域連携パス運用のコツを、2月27日から開催されている第80回日本胃癌学会総会のポスターセッションで紹介した。

 高金氏が地域連携パスを作成したのは、日本発の胃癌術後補助化学療法の有用性に関する大規模多施設共同研究(ACTS-GC試験)の結果を受けて、根治切除されたステージII〜IIIBまでの胃癌に対してS-1を使った術後補助化学療法が標準治療となり、今後、外来化学療法としての件数増加が予想されるからだ。

 07年9月から08年2月までに同院で胃癌術後補助化学療法施行の対象となったのは13例で、そのうち、S-1連携パスを使用した外来化学療法を実施しているのは6例だという。実施していない7例については、3例が患者が拒否し、3例が2コース目まででグレード2以上の有害事象が出現、1例は連携先が見つからなかった。

 高金氏は、この術後補助化学療法を病診連携で進める上での問題点として、有害事象発生時の対処方法、2週毎の血液検査、正確な投薬・休薬期間の把握、投与延期・中止の判断などを上げた。

 この問題点を解決し、“かかりつけ医”である診療所との連携を円滑に実施するためのコツとして、まず事前に診療所の医師に対して、胃癌の治療の最新動向を詳細に紹介し、S-1を使った術後補助化学療法の詳細を解説することや、有害事象などが見られた場合に、休日や夜間でも函館五稜郭病院が対応することを約束するなど、フォロー体制を整えることが重要とした。

 また、4週間投与、2週間休薬を1コースとするS-1の術後補助化学療法の最初の2コース(3カ月に相当)を函館五稜郭病院で実施し、その後、各診療所での外来化学療法に移行する体制を整えた。S-1では、重篤な有害事象は最初の2コースで発生することが多いためだ。3コース目から各診療所で外来化学療法を実施する。

 また、補助化学療法施行中は定期的に血液検査が必要だが、診療所では検査結果が得られるのが翌日となる。そのため、診察日(採血日)に処方箋を渡すが、翌日検査結果を患者が聞いてから調剤薬局で薬剤を購入するよう指導していることを明らかにした。患者にもクリニカルパスを説明し、情報を共有することで、翌日に薬剤を購入する方法を患者が良く理解してくれるという。患者もクリニカルパスを持つことで、自分自身の治療の状況がすぐに分かるため、安心できるようだ。

 患者は3カ月に一度、函館五稜郭病院でCTによる検査を受けるが、このCT検査データを同院と連携診療所の間でコンピュータネットワークによる共有が可能な仕組みも導入した。連携パス情報や紹介情報なども共有できる。導入費などはほとんど必要なく、パソコンを用意し、セキュリティを確保するための通信方法であるSSL-VPNを組み込むだけで良い体制とした。

 高金氏は、「我々は、もともと胃癌の患者を紹介してくれた診療所に返したいと考えている。診療所も非常にやる気を持っていると感じている。この地域連携の方法は、患者に説明して判断してもらうし、診療所にも説明して判断してもらっている。そのため、全ての患者を診療所に戻すことはできないが、特定の診療所に移す方法に比べて地域の診療所との連携は強化されるし、十分説明した診療所に移ってもらうことで患者が『見捨てられた』といったことを感じることもない。患者にとっても診療所にとっても、我々にとってもいい方法だと考えている」と語った。