関西電力病院の矢部大介氏

 DPP-4阻害薬シタグリプチンおよびGLP-1受容体作動薬リラグルチドの長期成績から、インクレチン関連薬による治療に適切な症例の条件が明らかになってきた。関西電力病院の矢部大介氏らのグループは、5月18日まで熊本で開催されていた日本糖尿病学会(JDS2013)のシンポジウムで講演。DPP-4阻害薬では体重増加が治療効果の悪い症例の関連因子として浮かび上がり、一方のGLP-1受容体作動薬では切り替え前のグルカゴン負荷試験でのΔC-ペプチド値1.34ng/mLがカットオフ値になりうることを報告した。

 矢部氏らは自験例および関連施設におけるインクレチン関連薬の長期使用例について、フォローアップを続けている。

 それによると、シタグリプチンを2年以上前に導入した2型糖尿病患者のうち開始後2年時点において、食事・運動療法のみでコントロール不十分な症例に対してシタグリプチン単独療法を導入した患者では、80%強がシタグリプチン単独療法を継続していた。コントロール不十分で他の薬剤を追加していた例、効果不十分で他の療法に変更した例、改善し薬物療法をやめた例、副作用などの理由で継続できていなかった例がいずれも5%程度認められた。

 一方、SU薬による単独療法でコントロール不十分な症例に対してシタグリプチンを追加した場合、約60%が併用療法を継続していた。他の薬剤を追加した例、効果不十分で他の療法に変更した例、副作用などの理由で継続できていなかった例がそれぞれ15%前後に認められた。改善し薬物療法をやめた例はなかった。

 シタグリプチンによる単独治療を継続できていた症例においては、HbA1cは7.0%未満を維持しており、3年にわたってその水準を維持していた。一方、SU薬の単独治療にシタグリプチンを追加し併用を継続できていた症例においては、3年にわたってHbA1cはおおむね7%前後で推移していた。体重については、単独治療群および併用群ともほぼ変化なく推移していた。

 ただし、SU薬による治療でコントロール不十分な症例にシタグリプチンを追加した併用群においては、最初の半年間はHbA1cが減少したものの、その後増加に転じた症例が見られた。約3分の1の症例において、6カ月後から1年後にかけて0.4%以上のHbA1cの増加を認めた。このような症例の特徴として、1kg程度の有意な体重増加を認めた。矢部氏はこの点について、たとえ半年間で1kgとはいえ体重増加が続いている症例については、生活習慣の乱れからHbA1c悪化をきたす可能性を指摘し、食事・運動療法に関する指導の必要性を強調した。

 次にGLP-1受容体作動薬リラグルチドを導入された2型糖尿病患者に目を向けると、治療開始から1年後の継続率は、前治療が薬物未治療もしくは経口糖尿病薬の場合、開始後1年時点において約5割がリラグルチドを継続していた。効果不十分で他の薬剤を追加した例が約2割、高血糖による継続中止例が1割強、他の副作用で継続が困難だった例が1割強だった。

 インスリンからの切り替えでは、開始後1年時点において4割弱がリラグルチドを継続していた。他の薬剤の追加例が3割弱、高血糖による継続中止例が3割弱、ほかの副作用で継続中止例が約1割だった。

 前治療によらずリラグルチドの継続例では、1年間にわたりHbA1cの有意な改善を認めた。

 一方、インスリンからの切り替え例においては、中止例も多かった。安全性の面から、今後こうした症例を事前に見極めることが重要となるため、矢部氏らは目安となる指標を探索した。その結果、切り替え3カ月後までに高血糖によりインスリン治療に戻った症例では、内因性インスリン分泌能に関する指標(グルカゴン負荷試験ΔC-ペプチド値やCPI値)の有意な低下を認めた。さらに、ROC解析により、切り替え前のグルカゴン負荷試験ΔC-ペプチド値1.34ng/mLがカットオフ値として算出された。1.34ng/mLより低ければ、インスリンからリラグルチドへの切り替え後、高血糖により治療継続が困難になる可能性が高くなる。

 矢部氏は、「不適切な切り替え例」についての報告も散見されるようになっていることを重視。今後、インクレチン関連薬の長期成績を向上させていくためには、インクレチン関連薬の治療が適する症例の条件を探っていくべきだろうと話している。