国立長寿医療研究センターの櫻井孝氏

 認知症を合併する糖尿病患者においては、認知症の周辺症状(BPSD)のうち、特に過食が血糖管理の悪化と関連していることが示された。糖尿病にアルツハイマー型認知症あるいは健忘型経度認知障害を合併した高齢者を対象に検討した結果、明らかになった。国立長寿医療研究センターの櫻井孝氏が、5月18日まで熊本で開催されていた日本糖尿病学会(JDS2013)のシンポジウムに登壇。検討結果をもとに認知症を合併した糖尿病診療の問題点について解説し、過食に対しては「積極的な生活介入が必要」と訴えた。

 櫻井氏は講演の冒頭、認知症診療において糖尿病診療に携わる医師の役割がとても重要になっていると切り出した。認知症を合併した糖尿病患者は、認知症の悪化が糖尿病の悪化を招き、それがまた認知症の悪化につながるという悪循環に陥る点を強調。その上で、放置すると急性代謝失調(低血糖および高血糖)のリスクが高まること、食事・運動療法の遵守は困難であること、服薬アドヒアランスが低いこと――などの特徴を挙げ、医療側の介入が必要と説いた。

 また、過食やアパシー(自発性の低下)などといったBPSDが、さらに治療を困難にしている可能性があることから、櫻井氏は、自験例を対象に検討を行ったBPSDと糖尿病の関連についての検討結果を紹介した。

 対象は、国立長寿医療研究センターを受診するアルツハイマー型認知症(AD)あるいは健忘型経度認知障害(aMCI)と診断された高齢者(252人、65〜85歳)。このうち薬物治療を受けている糖尿病患者は91人で、非糖尿病患者は161人だった。Barthel index<80、症候性脳梗塞、頭部MR検査で皮質性病変があった症例は除外した。

 AD/aMCIを合併した糖尿病患者について、HbA1c<7%群と≧7%群の2群に分け、比較検討を行った。

 その結果、認知症があり糖尿病の管理が不良(HbA1c≧7%群)な糖尿病患者では、(1)しびれ、顕性尿蛋白が多い、(2)基本的ADLが低下している(更衣がままならない、尿失禁があるなど)、(3)BPSD(アパシー、不適切な服装、ためこみ、過食、昼寝)が多い、(4)HbA1cのレベルが悪いほどBPSDは多い、(5)転倒リスクが高い――などの特徴を認めたという。ただし、認知機能には、HbA1c<7%群と≧7%群の2群で差は見られなかった。

 さらにBPSDに着目して検討したところ、アルツハイマー型認知症を合併した糖尿病患者では、認知障害と血糖管理には関連が見られなかったものの、BPSDはHbA1cが6.8%以上の群において、すでに増加していた。

 こうした結果を踏まえ、櫻井氏は、「BPSDの悪化は糖尿病の悪化につながり、それがさらなるBPSDの悪化を招く」ことが考えられると指摘。特に過食については、血糖管理の悪化につながる「糖尿病では重大な合併症」と強調した。また、過食は昼寝時間が長いほど多いことも紹介。「過食については積極的な生活介入を行うべきであろう」とまとめた。