松山市民病院(愛媛県)内科の仙波英徳氏

 糖尿病性神経障害のうち、しびれ痛みこむら返りなどの自覚症状が糖尿病患者の抑うつに影響を及ぼし、抑うつの程度を有意に上昇させたことが報告された。DOGO Studyの結果について、松山市民病院(愛媛県)内科の仙波英徳氏が、5月18日まで熊本で開催されていた日本糖尿病学会(JDS2013)で発表した。

 仙波氏らのグループはこれまでに、糖尿病患者は非糖尿病患者に比べて抑うつの頻度が高いことや、教育入院時の糖尿病患者の抑うつに影響を与える有意な因子は、インスリン治療、糖尿病性多発神経症状だったことを報告している。

 今回、仙波氏らは、糖尿病患者を対象に、糖尿病性神経障害が抑うつに与える影響について検討した。

 対象は、愛媛県内の病院に入院もしくは外来で治療する糖尿病患者481人。振動覚やアキレス腱反射などの身体所見の評価のほか、アンケート調査で糖尿病性神経障害に関する項目を調査し、自己評価式抑うつ尺度であるSDS(Self-Rating Depression Scale)との相関を検討した。なお、SDSの値は40点未満の場合に「抑うつなし」と診断し、40点以上48点未満を「軽度」、48点以上56点未満を「中等度」、56点以上を「重度」としている。また、糖尿病性神経障害の評価には簡易診断基準(糖尿病性神経障害を考える会、2002年改訂)を用いた。

 患者背景は、年齢が61.8歳、男性291人と女性190人、HbA1c(NGSP値)が7.23%、糖尿病罹病期間が11.8年だった。糖尿病治療薬の内訳は、経口血糖降下薬が272人、インスリンが152人。

 まず、糖尿病性神経障害の有無別にSDSを見たところ、糖尿病性神経障害あり群となし群の間で、SDSに有意差は見られなかった。

 そこで簡易基準の項目別にSDSを調べると、「自覚症状」がある群のSDSは40.63、ない群は38.06で、両群に有意差が見られ(P=0.0011)、自覚症状があると抑うつの程度が上昇していた。一方、他覚症状である「振動覚の低下」「アキレス腱反射の低下」については、症状がある群とない群の間でSDSに有意差はなかった(それぞれ39.60 対 39.70、39.34 対 40.07)。

 さらに自覚症状別にSDSをみると、「足の先がジンジン、ピリピリする」「足の先がしびれる」「足の先に痛みがある」「足がつる、あるいはこむら返りが起こる」といった症状がある患者では、ない患者に比べてSDSが有意に高く、抑うつ度が上昇していた。一方、足裏にぬれたティッシュがへばりついている、砂利の上を歩いているなどの「足の感覚に異常がある」症状については、両群のSDSに有意差はなかった。

 また、自覚症状の頻度をみたところ、「足がつる、またはこむら返りが起こる」は5割弱の患者で、「足の感覚に異常がある」「足の先がジンジン、ピリピリする」「足の先がしびれる」は2割の患者で、それぞれ確認された。

 これらの結果から仙波氏は、「糖尿病性神経障害のうち、しびれ、痛み、こむら返りなどの自覚症状が、糖尿病患者の抑うつに影響を及ぼす」と結論付けた。

 仙波氏は、糖尿病性神経障害や抑うつがあると血糖コントロール不良になる傾向があることや、糖尿病性神経障害の自覚症状は積極的な薬物治療で有意に改善することが報告されている点を紹介し、「糖尿病性神経障害の自覚症状に対して積極的な薬物療法を行うことで、自覚症状を改善するだけでなく、抑うつを改善し、患者のQOL向上と良好な血糖コントロールにつながる可能性がある」と語った。

 今後は、痛みの自覚症状がある患者に薬物介入を行うことで自覚症状が改善するのか、痛みの自覚症状が改善することで抑うつに変化があるのか、などについて検討したいとしている。「糖尿病性神経障害の自覚症状に介入すれば、抑うつの改善を見込めるのではないかと考えている」と語っている。