加古川西市民病院(兵庫県)の小林寛和氏

 既存の持効型インスリン製剤の治療で血糖コントロールが不十分の1型糖尿病患者に対し、新規の持効型溶解インスリンアナログ製剤であるインスリン デグルデク(以下、デグルデク)に切り替え、持続血糖測定(Continuous Glucose Monitoring:CGM)で評価したところ、血糖の変動幅が縮小し、夜間低血糖の発現も減少したことが報告された。加古川西市民病院(兵庫県)の小林寛和氏らが、5月18日まで熊本で開催されていた日本糖尿病学会(JDS2013)で、自施設での経験症例を提示した。

 1型糖尿病患者では、強化インスリン療法を行っても血糖コントロールに難渋する患者が少なくない。既存の持効型インスリンでは1日2回の投与が必要だったり、血糖降下作用に軽度のピークが存在することから、就寝前投与で夜間から早朝の低血糖発現が問題となることもあった。

 小林氏らは、血糖コントロールが不十分の1型糖尿病患者のうち同意が得られた4例について、それまで投与していた持効型インスリン製剤をデグルデクに切り替え、切り替え前後における血糖値の変動をCGMなどにより確認した。

 4例はいずれも強化インスリン療法を行っている症例だった。入院で切り替えた3例は、カーボカウントに基づき超速効型インスリンの投与量を調整し、CGMを実施した。残りの1例は外来にて切り替え、血糖自己測定(SMBG)で血糖値の変化を評価した。

 CGMを行った3例のうちの1例は、47歳女性(糖尿病罹病期間17年、糖尿病神経障害あり)。基礎インスリンとしてインスリン デテミル14単位を就寝前に、bolusインスリンとしてインスリン アスパルト(以下、アスパルト)を朝昼夕の食前(I/C比1.3、0.8、1.0)に投与していたが、bolusインスリンの投与量は変更せず、基礎インスリンをデグルデク14単位(就寝前投与)に切り替えた。

 切り替え前日の平均血糖値は214.0mg/dL、平均血糖変動幅(mean amplitude of glucose excursion:MAGE)は69mg/dL、血糖値変動の大きさを示す指標であるM値は149.7だったが、デグルデクへの切り替え2日後はそれぞれ165.7mg/dL、60.5mg/dL、37.9に改善した。CGMにより、切り替え前にはSMBGでは検知できなかった夜間低血糖を発現していたことが判明したが、切り替え後は夜間低血糖が見られなくなった。

 38歳女性(糖尿病罹病期間1年、糖尿病合併症なし)では、基礎インスリンとしてインスリン グラルギン(以下、グラルギン)の1日2回投与(朝4単位、就寝前14単位)を行っていたが、デグルデクの就寝前1日1回投与(18単位)に切り替え、2週間程度で12単位まで減量した。CGMの評価では、切り替え前日の平均血糖値は134.2mg/dL、MAGEは125.5mg/dL、M値は94.3だったが、デグルデクへの切り替え2日後はそれぞれ117.9mg/dL、102.7mg/dL、50.5に改善した。

 また、35歳女性の外来患者(罹病期間17年、糖尿病合併症なし)では、変更前はグラルギンを朝11単位、就寝前に13単位、アスパルトを4.5-3-3単位で投与していた。これを、デグルデク就寝前20単位およびアスパルト3-4-2単位に切り替えた。SMBGによる平均食前血糖は変更前の153mg/dLから変更後は108mg/dLに改善し、しばしば発生していた低血糖エピソードも減少した。

 小林氏はこれらの経験を基に、「1型糖尿病で、頻回に夜間低血糖を発現する患者、1日の血糖変動が大きく食前血糖値が安定しない患者、また持効型インスリンを1日に複数回使用しているような患者では、デグルデク導入を検討してもよいのではないか」と提案し、「デグルデクは糖尿病患者の治療戦略に新たな道を切り開く可能性がある」と結語した。