デンマークNovo Nordisk社のMarcus Niemeyer氏

 新規の持効型インスリンであるインスリン デグルデク(以下、デグルデク)のプレフィルド製剤は、フレックスタッチという新しいペン型注射器に充填されている。フレックスタッチはデグルデク製剤の種類にかかわらず、投与量の精度は高く、注入時に必要な力も弱くてすむことを、5月16日から熊本で開催されている日本糖尿病学会(JDS2013)でデンマークNovo Nordisk社のMarcus Niemeyer氏らが報告した。

 フレックスタッチは従来のペン型注入器と異なり、注入量に応じた注入ボタンのせり出しがない。注入時に指の力をほとんど必要としないので、指の力が弱くても確実に注入できるとされる。

 既存のペン型注入器の1つであるフレックスペンは、製剤の種類を問わず、投与量設定の精度に優れることが評価されている。そこでNiemeyer氏らは、濃度が異なる2種類のデグルデク製剤(100 U/mL、200 U/mL)およびデグルデクとインスリン アスパルト(以下、アスパルト)の配合剤が充填されたフレックスタッチについて、投与量の精度と注入時に必要な力を評価するとともに、これらの指標をインスリン グラルギン(以下、グラルギン)100 U/mL製剤を充填したペン型注入器ソロスターと比較した。

 投与量の精度のテストでは、4種類の製剤それぞれで15本入りの箱を2箱、市販用ロットから抽出し、合計30本ずつを検討対象とした。設定投与量は最小用量、中用量、最大用量の3種類とした。具体的には、デグルデグ100 U/mL製剤、デグルデク/アスパルト配合剤のフレックスタッチ、ソロスター(グラルギン充填)では最小用量が1単位、中用量が40単位、最大用量が80単位で、デグルデク200 U/mL製剤のフレックスタッチではそれぞれ2単位、80単位、160単位である。これらの設定投与量について注射器1本あたり2回ずつ、計60回注入試験を行い、設定用量と実際の注入量との違いを比較した。

 投与量の精度はISO11608-1:2000に準じ、誤差がその範囲内であれば適正と判定した。

 試験の結果、4つの製剤ともに、ISOが定める誤差範囲内で注入されていることが確認された。フレックスタッチに充填された3種類のデグルデクを含有する製剤では、濃度や配合の違い、また設定用量にかかわらず、注入量のばらつき(標準偏差)は少なく、かつ同等だった。一方、グラルギンを充填したソロスターでは、注入量のばらつきがやや大きい傾向にあった。

 注入に要する力(injection force)の比較は、各製剤25本を用いて最大用量の設定で行った。フレックスタッチでは、注入ボタンの押し始めから投与終了を知らせる音が出るまでに要した力を測定した。ソロスターでは、4mm/s、6mm/s、8mm/sの速さで注入ボタンを押し込み、投与完了までに要した力を測定した。

 3種類のデグルデク製剤を充填したフレックスタッチにおいては、製剤の種類にかかわらず5ニュートン程度のきわめて弱い力で投与が可能だった。一方、ソロスターでは、注入ボタンを押す速さに応じて15〜25ニュートン程度の力を要した。3製剤を充填したフレックスタッチでは、ソロスターの4mm/s設定に比べて56〜63%、同6mm/s設定に比べて71〜76%、同8mm/sに比べて80〜83%、それぞれ有意に弱い力で注入できた(すべてP<0.0001)。

 Niemeyer氏は「フレックスタッチは検討した3種類のデグルデク製剤において、ISO基準に合致した高い精度で、しかもより弱い力で投与すべき量をきちんと注入できることが示された。指先があまり器用でない人や手先の力が弱った人も含め、多くの糖尿病患者の日々のインスリン注入が容易になると期待される」と締めくくった。