米Billings Clinical Research CenterのChristoper Sorli氏

 新規の持効型溶解インスリンアナログ製剤であるインスリン デグルデク(以下、デグルデク)では、高齢糖尿病患者における夜間低血糖の患者当たりの年間発現件数がインスリン グラルギン(以下、グラルギン)と比較して少ないことが、7つの第3相臨床試験のメタ解析で明らかになった。米Billings Clinical Research Center(モンタナ州Billings)のChristoper Sorli氏が、5月16日から熊本で開催されている日本糖尿病学会(JDS2013)で報告した。

 一般的に、高齢の糖尿病患者は若年の患者と比較して低血糖の影響を受けやすい。高齢の糖尿病患者は、糖尿病罹病期間が比較的長期であり、低血糖に対するカウンターレギュレーション反応の減弱から低血糖に対する自覚症状の遅れをもたらし、低血糖発現リスクが増加している可能性がある。さらに、米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)が直近のDiabetes Care誌に発表した低血糖ガイドラインの改訂版でも、高齢の糖尿病患者では低血糖管理が特に重要であると強調された。

 このような現状を踏まえSorli氏らは、高齢の糖尿病患者において、1日1回投与で24時間を通じて安定した血糖降下作用を示すデグルデクの、全ての低血糖および夜間低血糖の発現リスクがグラルギンと比較して低下するかを、メタ解析によって検討した。

 メタ解析は、グラルギンを対照薬とするデグルデクの7つの第3相臨床試験(2試験が1型糖尿病患者対象、5試験が2型糖尿病患者対象)に参加した患者のうち、年齢65歳以上の910例(全症例の21%)を対象とした。いずれの試験でも、空腹時血糖値が目標値となるようインスリン投与量を調節するtreat-to-target法で実施された。

 その結果、まず1型糖尿病患者では、全ての低血糖(症状の有無にかかわらず血糖値56mg/dL未満かつ第3者の処置が必要だった低血糖と定義)の患者当たりの年間発現件数が、デグルデク群で58.06件/人・年、グラルギン群で52.03件/人・年、夜間低血糖(全ての低血糖のうち0時01分から5時59分までに発現したものと定義)がデグルデク群で5.71件/人・年、グラルギン群で9.43件/人・年だった。

 2型糖尿病患者では、1型糖尿病患者と比較して全ての低血糖の患者当たりの年間発現件数は、おおむね低かった(全ての低血糖:デグルデク群で6.19件/人・年、グラルギン群で6.89件/人・年、夜間低血糖:デグルデク群で0.74件/人・年、グラルギン群で0.91件/人・年)。また、いずれの病型でも、重度の低血糖の発現は両群ともに少なかった。

 2型糖尿病患者における、全ての低血糖の患者当たりの年間発現件数の投与群間の比(デグルデク/グラルギン)の推定値は、治療期間全体では0.76(95%信頼区間[CI]:0.61-0.95、P<0.05)、投与後16週から投与終了までの維持期間では0.73(95%CI:0.56-0.96、P<0.05)で、デグルデク群で統計的に有意に小さかった。夜間低血糖も治療期間全体では0.64(95%CI:0.43-0.95、P<0.05)とデグルデク群が有意に小さく、維持期間では0.61(95%CI:0.37-1.03)と小さい傾向にあった。

 1型と2型の糖尿病患者を併合した解析でも、治療期間全体における夜間低血糖の患者当たりの年間発現件数の投与群間の比(デグルデク/グラルギン)の推定値は0.65(95%CI:0.46-0.93、P<0.05)となり、デグルデク群で35%低く、その差は統計的に有意だった。また維持期間の夜間低血糖は0.65(95%CI:0.42-1.02)であり、デグルデク群で小さい傾向にあった。さらに、全ての低血糖でも、治療期間全体および維持期間いずれでも、デグルデク群で小さい傾向が見られた(全ての低血糖:治療期間全体で0.82[95%CI:0.66-1.00]、維持期間で0.79[95%CI:0.62-1.01])。

 Sorli氏は以上の結果を踏まえ、「デグルデクで低血糖の発現リスクが少ないことは、高齢の低血糖患者にとっての福音になると考えられる」とまとめた。