武蔵野赤十字病院の宮前玲子氏

 「食事なし」「食事量が少ない」「食事の遅れ」など食事に関連する低血糖リスクが高い一方で、治療薬の変更時や量の調整時にも低血糖リスクが存在することが示された。低血糖および低血糖発作の病名で救命救急センターを受診した糖尿病患者を対象に、低血糖の原因を検討した結果、明らかになった。武蔵野赤十字病院の宮前玲子氏らが、5月16日から熊本で開催されている日本糖尿病学会(JDS2013)で発表した。

 2011年11月から2012年10月までの1年間を対象に、低血糖および低血糖発作の病名で救命救急センターを受診した糖尿病患者について実態を把握した。同様の調査は、2010年11月から2011年10月までの1年間においても実施しており、昨年の日本糖尿病学会で発表している。今回は、この2年間の比較も行った。

 2011年11月からの1年間で、低血糖および低血糖発作の病名で救命救急センターを受診した患者は74人だった。このうち糖尿病患者が60人(男性35人、女性25人)を占めていた。病型は2型が52人、1型が7人、膵切除が1人だった。60歳以上の高齢者が68%を占めており、搬送時の血糖値は測定不可が27人、30mg/dL以下の患者は90%を占めていた。こうした傾向は前回の調査結果と同様だった。

 低血糖および低血糖発作で受診した糖尿病患者60人について使用している治療薬を調べたところ、インスリンが36人(超速効型;22人、速効型;8人)、SU薬が22人(SU単独;7人、DPP-4併用;6人)などだった。昨年との比較では、DPP-4の使用例が増えていた。

 血糖降下薬について内訳を調べたところ、SU薬単独が7例、SU+α-グルコシダーゼ阻害薬(αGI)が5例、SU+ビグアナイド薬(BG)とSU+DPP-4がそれぞれ3例、SU+DPP-4+αGIが2例などだった。

 利用者が増えているDPP-4に着目したところ、DPP-4を併用していた患者は8人で、全員60代以上だった(60代1人、70代4人、80代3人)。

 一方のインスリン製剤の内訳は、超速効型(×3)+持効型(×1)が11例、超速効型(×3)+持効型(×2)および混合型(×2)がそれぞれ5例だった。

 低血糖の原因を調べたところ、「食事なし」「食事量が少ない」「食事の遅れ」など、食事に関連したものが多かった(合計で25件)。これは前年と同様の結果だった。食事関連以外では、「薬の変更」「インスリン量調整中」が8件と目立っていた。

 高齢者が7割近くだったことから腎機能に着目したところ、「正常範囲」が37例だったのに対し、「腎機能低下」が23例と多かった。

 こうした検討結果をもとに、演者らはまず、前年との比較において「DPP-4阻害薬の使用者が増加していた」点に着目した。使用例が増えたのには、DPP-4の市場拡大が背景にあると推察。その上で、低血糖による搬送患者が高齢者に集中していたことを考えると、SU薬あるいはインスリンとDPP-4の併用を実施する際は、高齢者にとって重症低血糖のリスクを高める可能性があることに留意すべきだろう、とした。

 低血糖の原因の大半が食事に関することだった点については、「昨年同様の結果」とし、高齢者ではシックデイによる食欲不振だけでなく、加齢による食事回数あるいは摂取量の減少にうまく対応できないためではないかと考察した。

 注意すべき点としては、腎機能低下を伴う高齢者において、低血糖症状が遷延し、かつ、症状の回復が遅延していた点を挙げた。

 治療薬の変更やインスリン量の調整後においても、重症低血糖症状が出現していた点については、特に留意すべきとし、「こうした治療薬変更時には、改めて低血糖に対する指導が必要である」とまとめた。