金沢医科大学公衆衛生学の櫻井勝氏

 炭水化物脂質の摂取量と糖尿病発症リスクの関連は、BMIの程度により異なることが示された。BMIが25kg/m2以上の肥満者の糖尿病予防には炭水化物摂取を減らし、脂質摂取を増やす食事療法が有用であることが示唆された。金沢医科大学公衆衛生学の櫻井勝氏が、5月16日に熊本で開幕した日本糖尿病学会(JDS2013)で発表した。

 日本人成人の炭水化物摂取目標量は50〜70%エネルギー未満とされているが、近年では低炭水化物食も糖尿病や肥満などの治療に有用であると報告されている。ただし日本糖尿病学会は、低炭水化物食のエビデンスの不足や安全性への懸念を理由に、炭水化物と脂質のバランスが重要であり、糖尿病患者の炭水化物の推奨摂取比率は50〜60%エネルギーを目安とすべきと提言している。そこで今回櫻井氏らは、日本人中年男女において炭水化物と脂質の摂取熱量比を評価し、その後の糖尿病発症との関連について検討した。

 2003年に某企業の職域健診の受診対象者だった3776人のうち、健診非受診者、糖尿病患者、追跡不能者を除外した3515例(うち男性2035人、平均年齢46歳)を対象とした。高血圧などで栄養指導を受けている例が男性で8.1%、女性で7.4%、それぞれ存在していた。栄養調査は、自記式食事暦法質問票(DHQ)を用いて行った。対象者の栄養素などの摂取状況をみると、1日当たりの摂取熱量は男性2194KcaL、女性1843KcaLだった。炭水化物は男性57.6%エネルギー、女性58.8%エネルギーだった。脂質は男性21.5%エネルギー、女性25.9%エネルギーだった。

 対象を、「日本人の食事摂取基準(2010年版)」の目標値を参考に、炭水化物摂取量と脂質摂取量に応じて4分割した。炭水化物摂取量が50%エネルギー未満だった14.7%を低摂取群、50以上60%未満だった46.0%を適正群、60以上70%エネルギー未満だった32.1%を適正高値群、70%エネルギー以上だった7.2%を高摂取群とした。同様に、脂質摂取量が20%エネルギー未満だった30.5%を低摂取群、20以上25%エネルギー未満だった28.2%を適正群、25以上30%エネルギー未満だった25.1%を適正高値群、30%エネルギー以上だった16.2%を高摂取群とした。

 対象の背景として特徴的だったのは、炭水化物摂取量が多い群ほど年齢が高く、飲酒習慣が少ないことだった。また脂質摂取量が多い群ほど女性の割合が高く、年齢が低く、飲酒習慣は少なかった。

 対象について平均6.4年の観察研究を行ったところ、この間に糖尿病を発症したのは273例(うち男性203例)だった。炭水化物および脂質摂取量の適正群に対する各群の多変量調整糖尿病発症ハザード比(HR)を算出した。多変量調整には、性、年齢、BMI、糖尿病家族歴、飲酒、喫煙、運動習慣、高血圧の有無、脂質異常の有無、摂取熱量、摂取食物繊維量、食事療法の有無を用いた。

 その結果、炭水化物の低摂取群では発症率が13.2/1000人年(適正群に対するHR:0.95、95%信頼区間[CI]:0.66-1.37)、適正群では11.2/1000人年、適正高値群では11.8/1000人年(適正群に対するHR:1.14、95%CI:0.85-1.53)、高摂取群で18.2/1000人年(適正群に対するHR:1.37、95%CI:0.87-2.16)と摂取量が多い群ほどリスクが高まった。一方、脂質の低摂取群では発症率16.9/1000人年(適正群に対するHR:1.15、95%CI:0.84-1.56)、適正群で11.6/1000人年、適正高値群で9.0/1000人年、高摂取群で9.3/1000人年(適正群に対するHR:1.07、95%CI:0.70-1.63)と、適正量より多くても少なくてもリスクが高まった。

 炭水化物摂取量と糖尿病発症の関連をBMI別に見ると、BMIが25kg/m2以上の肥満者では炭水化物の摂取量が多いほどリスクが高かった(P for trend=0.023)。脂質摂取量は、BMIが22kg/m2未満の非肥満者では多いほどリスクが高まった(P for trend=0.020)が、肥満例では反対に摂取量が少ないほどリスクが高かった(P for trend=0.025)。

 これらの結果から櫻井氏は、「炭水化物摂取量、脂質摂取量と糖尿病発症との関連は、BMIの程度により異なり、非肥満者では高脂質摂取が、肥満者では高炭水化物・低脂質摂取が糖尿病発症リスクと関連していた」と結論した。その上で、「肥満者の糖尿病予防には炭水化物摂取を減らし、脂質摂取を増やす食事療法が有用である可能性が示されたが、食事摂取基準の目標量を超える低炭水化物食の有用性についてはさらなる検討が必要だ」と考察した。